反強磁性体のなかでも,特に,一次元スピン系で量子効果が起り易いのです。一次元スピン系は交換相互作用が結晶軸のある特定の方向にだけ強く働き,それに垂直な方向にはほとんど働かないスピン系のことです。これは三次元スピン系に比べて不安定なため量子効果がよく現われます。
一次元反強磁性スピン系の量子効果の特徴は,基底状態(スピン系の一番エネルギーの低い状態)が一重項になり,励起状態との間にスピンギャップとよばれるエネルギーギャップが生じます。しかも,一重項は磁性の性質をもちません。そのため温度を下げて行くと全スピンが非磁性の基底状態に落ち込むので,スピン系でありながら磁性の性質が消えてしまいます。このことは,三次元スピン系が温度の低下とともに磁性の性質を強めることに比べて対照的です。
実は10年あまり前に発見された高温超電導体ですが,そのメカニズムは未だに明らかになっていません。しかし,スピンギャップ系のスピン揺らぎが重要な役割を果たしているという説もあり,その意味からもスピンギャップの研究は重要です。
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