2004年度後期 力学II 講義の記録

月/日= 10/4 : 10/18 : 10/25 : 11/1 : 11/8 : 11/15 : 11/22 : 11/29 : 12/6 : 12/13 : 12/20 : 1/17 : 1/24 : 1/31 : 2/7 : 略1 : [page bottom]

《 予定の部分は、昨年度の教員間の進度連絡用のメモを元に作成したもの なので、学生向けとしては内容が ずれた 感じがすると思いますが、時間をかけて 順次修正していくつもりです。》

《 ●は教科書にある項目、◯は教科書にない事項の補足 》
《 ×は省略する項目,後まわしにする項目 》
を付した問題は単位取得の最低条件,必ず解答できるようになること》
[教] は教科書の対応項目 》 教科書は「理工系の基礎物理 力学」 原康夫著、学術図書出版社

04/10/4(月) 講義済み

◯評価方法
  専門科目にふさわしく,試験は定期試験のみを行います.
  日常の学習の動機付け補強の役割は力学講究などが果してくれるでしょう.
  試験以外の義務として,毎回の講義中に回覧する出欠表に署名してください.
  工学部の規定によれば、欠席回数が5回以上だと単位を与えられないからです.
  この講義では,欠席回数が4回以下である限り,成績評価は出席回数と無関係です.
◯講義内容と教科書の対応関係
  講義の章立ては,原則として教科書の9〜15章に準拠させます.

●てこ [教]§9.0(9章の前書き,p.131)
  てこのつりあう条件を思い出そう.
  力×腕の長さ を力のモーメントという.
  てこのバランスは、力のモーメントのバランスである.

  力のモーメントの概念を,力と腕が直交しない場合へ一般化しよう.
  力を腕に平行な成分と垂直な成分にわけると,平行な成分は回転を誘起しない.
  ということは,垂直な成分のモーメントであると定義するのが自然である.
  長方形の面積は,平行四辺形の面積ととらえることもできる.
  そして,平行四辺形の面積は,ベクトルの外積という数学概念に一般化される.

●外積  [教]§2.5(p.30)

  ことば:内積,外積,スカラー積,ベクトル積

  平面内のベクトルの外積
   裏表のある平行四辺形の面積 (面積だが正の値も負の値もとる)
   例:力のモーメント:外積の概念を用いると,左まわりを正,
     右まわりを負で区別できて便利

  空間ベクトルの外積
      (教科書 p.30 §2.5 : 林先生担当の力学Iでは例年スキップのはず.)
    外積の幾何的な定義を説明する.
     ・大きさは平行四辺形の面積,
     ・方向は右ネジで定義.
    内積と外積の対比 (i) cos θ と sin θ (ii)スカラー積とベクトル積

   外積が通常の「積」演算と同じ性質をもつこと(証明はベクトル解析の講義で)
     例えば,分配則  A×(B+C) = A × B + A × C 
     例えば,積の微分公式 (A × B)' = A' × B + A × B'

×・・・成分による外積の表式

   本日のここまでの説明の目的は,てこのつりあいの概念から,
   想像力をふくらませて外積という数学概念へ一般化すること.
   このあとの説明の目的は,この外積の概念を用いて,回転についての
   基本関係式を演繹的に導くこと.

●力のモーメントと角運動量
      外積による定義 : N = r × F,  L = r × p
      (上式ではさぼったが,スカラー量とベクトル量は必ず区別して書くこと)

●回転の運動方程式
      d L / d t = N  
     上式をニュートンの運動方程式から導出した.
     ただし,外積に関する諸公式を証明なく使用した
          ・外積の微分公式 (F×G)' = F'×G + F×G' 
          ・外積の分配則  F×(G+H) = F×G + F×H
     並進の運動方程式 d P / d t = F との対応関係に注目せよ.
     N や L を前述のように定義する理由は,そう定義すると,この回転の運動方
     程式が成り立つからである.

     てこのつりあい条件が ΣN=0 であることの導出:
     つりあい → 静止している → L=0 → dL/dt=0 → N=0
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04/10/11(月) 休日(体育の日)

04/10/18(月)講義済み

●復習: 力のモーメント・角運動量・ベクトルの外積・回転の運動方程式
・・◯てこのつりあい、力のモーメント、回転の向きを符号で

・・◯d L / d t = N = r × F が d P / d t = F から導ける。 
   力学を学ぶとは,d L / d t = N という式を「公式」として覚える
  ことでなく,それがd P / d t = F からどのようにして導かれるのかを
  理解することである.「公式」間の関係の構造を頭のなかに構築するこ
  とが力学学習の第一の目標である.

・・×外積の方向を、2本のベクトルに垂直な方向だと定義するこころ
    外積は2本のベクトルの張る平行四辺形の面積とその面の方向を表す。
     2次元空間では面の方向は表と裏の2通りなので、面積に正・負の
    符号をつけるだけで指定できる。
     一般には平面の方向は平面を指定するための2本の直線の方向
    で決まるが、3次元空間では、その代わりに平面の法線の方向を
    指定すれば、残りの2方向は決まってしまう。したがって、平面
    の方向は、(法線の方向として)直線の方向と同様にベクトルを用
    いて指示することができる。こういう理由で外積演算の結果とし
    て得られる量はベクトルになっているのである。
     なお、2年生以降では、直線の方向をあらわすベクトルを極性
    ベクトル、平面の方向の表すベクトルを軸性ベクトルと呼んで
    区別することがある。由来の異なるベクトルは、場合によっては
    異なる振る舞いをすることがあるからである。

×偶力 [教]§9.1
  基準点に依存しない特殊な力のモーメントである. → 剛体の項で取り上げる。

×自転の角運動量 
  基準点に依存しない特殊な角運動量である → 剛体の項で取り上げる。

●角運動量保存則 [教]§9.3
  中心力とは

  [p.134/例題1] (1)を説明,(2)は省略.(1)は

・×[p.135/問3] フィギュア・スケートのスピン・アップ
   この例は質点系の話なので、一質点を扱うこの節の例としては、論理的な飛躍
   がある。それでもなお、学生にとって既知の現象に関連した直観的な話を加え
   ることに益があるという考え方のあると思うが、今年度は、この例題は剛体の
   回転の節までとっておくことにする。

・×[p.136/問4・問5] → 「剛体」の章でとりあげる.

×補足: 力のモーメント・角運動量の基準点の選択
  力のモーメント・角運動量の定義は座標原点に依存していることに注意!

   どの点が原点でも回転の運動方程式は成立するが、
   対象とする系の運動の理解に役だてるには基準点を適切に選ぶ必要がある。
   基準点の選択はたいていの場合自明である。   


●9章のまとめ [教]p.136
  各自で追加事項を書き込んで自身の役に立つまとめにしてください.
・・◯追記:
    「並進運動」という学術用語を知っておく (並進 ←→ 回転)
    「偶力」の項:「どの点を基準点にしても同じ力のモーメントを持つ」
    (3)式のθ,(6)式のφを図示しておくこと.

[演習問題9] : すべて省略する.
    自習していて問の意味がわからないときは、答を見て、問と答から問の意味を
    考える課題として取り組みなさい。

●人工衛星 [教]§10.0
  人工衛星が落ちてこないことの、
  図10.1 のような直観的理解 と 数式による理解の対比。
  * 地球が丸いなら南半球の人は宇宙空間へ落下してしまうのでは?という
    疑問を抱いていたころがありますか?それは何才まででしたか?
  * 人工衛星が落ちてこないのが不思議だと思ったのは何才までですか?
  * 図10.1で地球を3/4周して地面に落ちる軌道はあると思いますか?
    これから学ぶとおり、楕円軌道なので,半周して地面に衝突しなければ投出点に
    回帰します.
・・●月の運動とりんごの運動の統一理論 というとらえかた
  教科書のp.138を各自が家で読んでおくこと。

● 万有引力 [教]§10.1
・・◯質量の積に比例することが、広がった物体間の重力が部分間の合力として
   求まることと整合性があること
・・◯クーロン力のガウスの定理を電気力線を描いて理解できる(高校物理の復習).
   同じく 逆2乗力 である重力も同じ説明がなりたつことが言える.
・・◯自習用の追加問題:人工衛星の周期を求めよ。
   地球1周が4万kmであることは,メートルの元々の定義と合わせて,
   常識として覚えておきたい.
・・●重力定数  自習用追加課題:重力定数は何%の精度でわかっているか計算せよ。
   他の基礎物理定数と比較して低精度である.重力が弱い力であるためである.
   この講義の試験に関して言えば,重力定数の値を暗記する必要はない.
・・●地球の質量
   キャベンディッシュ Gの測定 → 論文「地球の質量を測る」。
   論文のタイトルの付け方についての教訓がある(賛否両面あると思う)
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04/10/25(月)講義済み

●ケプラーの法則と万有引力[教]§10.2
・・●ケプラーの発見した惑星運動に関する3つの法則
    高校で学習済み.
・・◯ニュートンの運動方程式から楕円軌道を導き出す
    *運動方程式を動径方向と角度方向の2方向に分解して極座標で書くため、
     加速度の動径方向成分、角度方向成分 を極座標 r, θ で表す式を
     導出過程抜きで与えた。
     導出は、今学期が終わるころには自力でできるようになるでしょう。
     (ベクトル解析などの講義で学ぶ事項の応用です)
    *角度方向の方程式から、角運動量保存則 (= 面積速度一定の法則)が
     結論される。
     ・・・加速度の角度方向成分を (1/r) d(r^2 dθ/dt )/dt と書き直す
        ことが、特殊な技巧のようで嫌だと感じる人への朗報:
        2年前期の解析力学で学ぶオイラーラグランジュ方程式から出発
        すれば、もっと一般的に通用する形で導出できます,遠くまで見
        晴らせる開けた場所に出たような爽快感が味わえるでしょう.
    *動径方向の方程式で、角運動量を定数に置き換えて、rについての
     2階常微分方程式を得る。微分方程式の一般論は2年前期の応用数学Iで学ぶ。
     ・・・この方程式は、解き方が特殊なので、この講義では、解はこう、
        と導出過程なしに与えることにする。勉強の適切な順番は,
        まず、一般性のあるものを応用数学Iで学んだあとで、この
        ような特殊な解き方でとける微分方程式もあるのだと知るこ
        とだと思うからです.
         さらに,変数が t から θに変わっているので,与えた解が
        確かに解であることを確かめるのにさえ,まごつくこともあ
        るでしょうが,おおいにまごついて頭の体操をしてください.
    *解が楕円を表すことを示すため、極座標での楕円の方程式を導く。
      1. 楕円とは円を縦横に伸縮した形
        → デカルト座標での楕円の方程式(高校で学んだ、学生周知の定義)
      2. 楕円とは2焦点からの距離が一定である点の集合でもある
      3. ひとつの焦点を原点とする極座標での楕円の方程式の導出
       ・・・以下では2焦点からの距離の和の半分を r_0 と表す.
    *角運動量 L とエネルギー E という2つの保存量を、楕円軌道の形状を
     表すパラメータ r_0 と εによって表してみる。
     ・・・以下では,惑星の質量を m ,太陽の質量を M と表す.
    *運動の周期を求めてみる。
      1. 長(軸半)径と短(軸半)径を r_0 と εで表す。
      2. 軌道の囲む平面領域の面積を求める。
      3. 面積速度 L/2m を r_0 とεで表す。
      4. 周期=面積/面積速度。等式から εと m が消えて、
        周期、長径、太陽質量の3量の関係式となる。
        → これがまさにケプラーの第3法則になっている。
    *距離の逆2乗力のもとでの運動の分類:[教]p.200 最下5行
     離心率  軌道の形   エネルギー  距離無限大での運動  
     ε<1   楕円      負     有限距離までしか行かない
     ε=1   放物線     零     静止
     ε>1   双曲線     正     等速直線運動


◯天体の質量を、その周囲をまわる小天体の運動から求める方法
・・◯月の軌道半径と公転周期から地球の質量を求める 
     [補足] 朔望月と恒星月
・・◯地球の公転周期から太陽の質量を求める (計算は自習) 
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04/11/1(月) 講義済み

・・●惑星の軌道が円の場合のケプラーの第3法則の証明
    問1 : [自習]各自で読めばわかるので、自習しておくこと。
    一般の軌道の場合の証明は,教科書の方針にしたがい,講義でも行なわない.
    第一・第二法則は,個々の惑星の軌道について成り立つ法則であるが,第三法則
    は,比例定数がすべての惑星に共通である点が法則なので,趣がややことなる.
・・●静止衛星
    放送衛星は,昼も夜も固定した衛星テレビ受信用パラボラアンテナの向く先にある.
    なぜ止まっているのか?「静止」より説明的な言い方が英語では併用されている.
    stationary = geostationary = geosynchronous satellite
    静止         「対地静止」       「地球同期」      衛星
    例2 : [自習]
    問2 : [自習]

・・●銀河の質量 とダークマター の存在 [教]§10.2 例3
    球対称に分布した質量のつくる重力場は点状物質のつくる重力場と同じである。
    このため、静電気力の場合に高校で学んだことを思い出そう。
      ガウスの(発散)定理: 
        ベクトル解析の重要事項であり、来年1月までには数学的な定理と
        して学ぶことになる。
      高校では、この定理のひとつの帰結を
        「距離の逆2乗は力線描像で理解できる」、
      という形で教えたことと思う。
      力線描像:
        1) Qクーロンからは Q/ε_0 本の電気力線が出る。
        2) 電気力線の密度を電場という。
        3) qクーロンの電荷に働く静電気力 F は、他の電荷の作る電場をE 
          として、F = q Eである。
      重力も逆二乗力であるから、力線で理解できる。静電気力との違いは、
      正と負の2種類の電荷がない点、引力である点である。したがって、
      球対称な質量分布の対称の中心点からrの点に働く重力は、半径rの球内
      にある質量を中心点に集めた場合の重力を同じである。
      で、ダークマターの説明は、教科書にあるとおりである。
・・●銀河系の中心にある ブラックホールらしき天体の半径と質量
   [教]§10 演習問題B7より新しい下記の観測結果を用いて計算する.
     European Southern Observatory Press Release 17/02
      (参考 : その日本語の紹介記事)

      動画も一見の価値があります。上記のWEB page の
      "ESO PR Video Clip 02/02 [MPEG Video; 533 k]"
      と書いてあるところをクリックすると見られます。

    最接近時の距離と速さから,円軌道を仮定して得られる質量の上限と
    放物線軌道を仮定して得られる質量の下限を求め,データへの楕円の
    フィットによって得られた質量がその間にあることを確かめた.
     次に密度の下限を計算し,さらに,仮に,
    太陽程度の質量の天体の集団であるとした場合のその天体間の平均距離を求めた.

    太陽と地球の間と同じくらいの間隔で、太陽くらいの質量の星が260万個も
    密集している。そんなシステムが安定に存続可能なのか?
    → 重力多体問題 (次の章の質点系の力学につながる)

×地球を貫通する井戸の中の運動 [教]§10.2 例題1 省略
  地球の中の重力場は調和振動子。

●万有引力による位置エネルギー[教]§10.3
・・●重力の位置エネルギー [教]§10.3 (10.21)式
・・×脱出速度 [教]§10.3 例題2 [自習] 
・・×位置エネルギーの符号と軌道の分類(楕円軌道,放物線軌道,双曲線軌道)との関係
    →各自で整理せよ.

×直線運動以外での仕事とエネルギー[教]§10.4 → 学期最後の講義に延期
  力学Iの主目標は「高校の力学を微分・積分を用いて書き直すこと」。
  §10.4 はその仕上げにあたる。
  「ベクトル解析」で「線積分」を学習したあとに取り上げるのが正常な順番なので
   最終講義までとっておく。

×演習問題10 A,B :[教]p.149 ほとんど省略。
・・B-1 ビリアル定理 → 解析力学を待て
・・B-5 潮汐 → 2体系の問題 → 講義では触れないが自習したほうがよい項目
・・B-7 射手座ブラックホールの質量 → 新データで計算した.
 
◯質点系と剛体
  教科書の11+12+13+14章のタイトルは教科書では「剛体の・・・」となっているが、
  内容は質点系一般に当てはまる事項がほとんどである。
  著者の意図を推測すると、質点の集まりは工学一般にはあまり馴染みがない
  対象なので、馴染みのある剛体を例にして話を進める形にわざとしたのだろう。
  しかし物理学では研究対象が質点の集まりであることがほとんどなので、
  この講義では質点系の話として進めることにする。
   したがって、これらの4章の内容をまず、質点系の一般論として展開し、
  次に、質点系の特殊なものとしての剛体系を論じることにする。即ち:

      この教科書の説明方針:
           剛体の運動法則 → 質点系の法則への一般化 
           → ニュートンの運動方程式からの導出
      講義の説明方針:
           ニュートンの運動方程式 →質点系の一般的性質 → 剛体への応用

●質点系とは [教]§11+12

   一質点の力学 →  質点系の力学
    ニュートン力学では,全てのものは質点の集まりとして扱えると考える:
   連続体(剛体,弾性体,流体等)は質点系の粒子数→∞の極限として扱う.
   質点は回転しないが,剛体には向きという属性があり回転運動を行なう.
   剛体は1個の質点ではあらわせないが,質点系の特殊なものとしてならあらわせる.

04/11/8(月)講義済み

●復習
  1質点の運動方程式 m a = f  と質点系の運動方程式 m_i a_i = f_i (i=1,...,N)
  N本の方程式は絡み合っている: f_i = f_i(r_1, ・・・ r_N, (t))
  ⇒ 「解く」のが難しい (3体問題、多体問題)

【いつか説明の追加を予定】 「解く」とは?  微分方程式。 運動の積分。

  しかし、あらゆる質点系で成り立つ性質がある(保存則)
  それを示すには、力を、それを及ぼす相手毎に分けて考えるとよい。
    f_i = F_i + Σ_{j (iを除く)} F_{ji}  (項の意味 ⇒ 講義で)

●質点系の運動量保存則 [教]§11.3+11.4
  質点系の力学的側面を記述するため,まず記述に必要な諸量を表す記号を決める.
  力は2質点間に働くものとする.
  × → 二体力 という.ニ体力の重ね合わせに還元できないとき多体力という.
  【注】中心力であることは要請しない.非中心力の二体力の例を図示する.
  しかし作用・反作用の法則 は必ず成り立つはず.
  【補足】作用反作用の関係にある2力と釣り合いの関係にある2力の違いは?
  自分自身に力を及ぼすことはない.
  内力と外力を区別することがあとで重要な意味を持つ.
  質点系の運動方程式を書き下す.
  質点系の全運動量の従う微分方程式を導出する.
  外力が働かない場合,質点系の全運動量は変化しないことが直ちに見てとれる.
  →「全運動量が保存される」と言う.

●重心 [教]§11.2
・・●N質点系の重心座標の一般式
    重み付き平均の概念:
     例 「中間試験と期末試験を1:2の割合で平均する」とは?
・・●2質点系の重心座標: 距離は質量の逆比になる.
・・●3質点系の重心座標:2個の質点を、それらの重心に集めても、全系の重心は
   動かない。
・・×「重心の位置の積分形での表現」は省略するが、自習が望ましい。
    教科書の本文右側の余白に、「 →微分積分II の重積分」 と書き込むこと。
    実際、微積IIの教科書(下村・三上)p.193に重積分で重心を求める問題がある。
     重積分は慣性モーメントの計算のときにも必要になる。
    講義「微分積分II」で重積分を習うのは今学期が終る直前でしょう.
・・●[教]p.153 例題 1 解説する.
    定義のベクトル式の各成分を計算すれば,なんら策を弄する必要なく,重心
    の座標は計算できる.図形的な理解法を全く知らなくても計算はできる.
    しかし,図形的な理解法を知っている人のほうが洞察力がよく働く.
・・●[教]p.154 例題 2 解説する.
    穴の部分は引き算するという発想.
    対称性を利用すれば積分は不要である.
    【類題】円盤に偏芯して円形の穴をあけた一様な面密度の板の重心
    【補足】対称性と対称操作、ベクトル間の等式の座標回転不変性:
      形状の対称性から重心がその形の中心にあることは直感的に明らかに
      思えることがある。そのような直感をどのようにして論証すればよいか。
・・×[教]p.154 問2 あとまわし
   剛体に働く重力は,重心に集中して作用するとしてもよい(「よい」=「運動方程
   式の解が変わらない」)ことを説明した後でとりあげる,
   【類題】人体の重心を求める問題(まず立って体重を測ってから板に寝る)

●重心の運動方程式 [教]§11.3+11.4
  質点系の全運動量の従う微分方程式 を 重心 を使って書き直すと、
  重心の運動方程式 になる.
  その意味するところを言葉で表現できること。
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04/11/15(月)講義済み

  復習:重心の運動方程式
・・◯宇宙飛行士がもがいても移動できないという例
    手に持ったスパナ(工具)を投げれば反動で移動できるが、飛行士とスパナと
    をあわせた系の重心はやはり不動である.
    スパナに紐をつけておいて,あとでスパナをたぐりよせれば,飛行士は
    元いた場所に正確にもどってしまう.
・・◯ 問題: ボートの上を歩く人(の改作) [教]p.159 演習問題11.B.2
     床の上に板がおいてあり、板の上に人が立っている。床と板の間に摩擦力は働かない
     とする。人が板の端から端まで移動すると、板は床に対してどれだけ動くか?
      解法1: 運動量保存則を利用する(高校生の解き方を積分を使って一般化したもの)
      解法2:重心運動に着目する(おすすめ)
・・◯ 自習用 類似問題: 
    【問題】
    まさつのない氷の水平面の上に、台、台の上に距離 l(エル) 離れて2人の人
    間 AとB がのっている.Aは手に質量m のボールを持っている.台+A+Bの
    質量は M である.最初,すべては静止していた。その後,Aがボールを
    B に向かって投げた。ボールの水平方向の速さは v である.

    (1) ボールが空中にあるときの台の速さ V を求めよ。

    (2) Bがボールをキャッチした時点での,台の移動距離 d を求めよ。

    【考え方】
    (1) 各部に働く力をもれなく描き出す.(接触力は? 遠隔力は?)
    次に「系」を設定して,各部に働く力を内力・外力に区分する.
    外力が単純な力だけになるように系をとれれば,問題は容易に解けるようになる.
    ここでは次のようにとるとよい.

     系 = 台+A+B+ボール

    系に働く外力は、各部に働く重力と氷面が台を押し上げる垂直抗力だけで
    あるから,水平方向の成分はゼロである.
    したがって,系の水平方向の全運動量が保存される。 
    → この関係式から V を決めればよい。

    (2) 系に水平方向の外力は働かないから,
    重心座標の水平方向の成分は、等速直線運動をする。
      初期状態で重心は静止 
    → 重心座標の移動速度の水平成分はゼロ 
    → 重心座標の水平成分は不動。
    → この関係式から d を決めればよい。

×  【補足】
    (1)は全運動量の方程式 d P / d t = F で求まった.しかし,
    (2)の状況で,運動量の方程式から言えるのは,全体が静止していることであり,
    後退距離は求まらない.しかし重心運動の方程式
       d (d M R / d t) / d t= F 
    を使えば求まる.ということは重心運動の方程式は全運動量の方程式より
    多くの情報を含んでいることを意味している.
     並進運動の場合しか知らないと,重心運動の方程式と全運動量の方程式を
    区別することはほとんど意味がないように思えるが,回転運動と比較すれば,
    重心運動の方程式のありがたみが実感できるようになる.
    端的に言えば,P = M d R / d t と書ける R (重心)が存在する
    ことが重要なのである。一方、角運動量に対応する「系の全体としての方向
    を表す角度座標」は、一般の質点系には存在しない。即ち,
    L = I d θ / d t を満たすような定数Iと質点の座標の関数θが
    見つけられないのである.
    (特殊な場合,例えば固定回転軸をもつ剛体なら I は慣性モーメント,
    θは回転角とすれば済むことだが,一般の質点系ではそうはいかない.)
     これをあると錯覚したときが、「猫の宙返り」(後述)が不思議に思える
    ひとつのケースであると思う
     猫の宙返り問題とは「空中に投げ出された猫は外力を利用することなく体の向きを
    変えることができる.この事実を人は(特に力学をかじった人は)なぜ不思議に思うか」
    という問題です。「向きを変えることができる」という事実は、力学と矛盾はありません。
    それにもかかわらず、力学をかじった人はどういう勘違いから不思議に思うのでしょうか、
    という人間の頭の中でおきていることの分析なのです。人にはいろいろな勘違いの仕方
    がありうるため,唯一無二の解答は決められません.
・・●花火の例 [教]§11.3 問3
・・●水泳の飛び込みの例 [教]§11.3 図11.11
    ただし、(a) と (b) が逆になっているので訂正した。
    本文で説明しているのは空中姿勢によって
    水泳パンツの軌道は変わるが重心は同じ軌道を通るということで、
    (a) の方がパンツの軌道は高くあるべきなのに図は逆になっている。
×外力が重心に行なう仕事と重心運動の運動エネルギーの関係 [教]§11.4
  1質点について導出済みの仕事と運動エネルギーの関係式が
  多体系の重心についても成り立つことがある。
  → 13章に入るまで,説明を延期する.
  例2 ヨーヨー

●演習問題11[教]p.159
  Aの4, Bの2 を自習すること: 

×【補足】全運動量の保存則の「原因」を突き詰めると:
  初等力学では,「作用・反作用の法則」に帰着させる.  
  解析力学や量子力学では,「系の並進対称性」のためと表現することになる.
  (作用・反作用の法則は力の性質.後者は,力の原因としてポテンシャル
  エネルギーがあると想い浮かべ,そのポテンシャルの性質を考える.)
●2体問題 [教]§11.5
  重心座標と相対座標への変数変換による運動方程式の分離
  2体問題の1体問題への帰着
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04/11/22(月) 講義済み

  復習:2体問題の1体問題への帰着
・・◯ひもでつながれた2質点の円運動を、個々の質点の重心のまわりの
   円運動と見る見方と、相対運動とみる見方の比較。
・・◯相対運動がケプラー楕円運動のときの個々の質点の重心に対する運動の例

●[教]§11.5 p.157 下から5行に2体系の運動エネルギーの重心運動と
  相対運動の寄与への分解が述べられているが、
  これへの補足として、下記の4項目を説明する。

・・◯N体系でのエネルギーの分解
    式の導出では,重心運動と重心に相対的な運動の両方の力学変数の混在した項
    (cross term,交差項) が消えることがミソ.
    × 式(11.33)はその N=2 の場合なので、各自で導くこと。
    重心運動に相対的な運動のエネルギーは,例えば熱エネルギーである.
    この場合,運動エネルギーを巨視的部分と微視的部分にわけていることになる.
    あるいは,自転運動の回転のエネルギーなどである場合もある.
・・◯N体系での運動量の表式では,重心運動による項だけしか残らない.
・・◯N体系での角運動量の分解
   数式による導出ののち、例として
   地球の自転と公転の角運動量を足すと、太陽を基準点とする地球の
   全角運動量になることを挙げる。
   また、原子のなかの電子の系のスピン角運動量と軌道角運動量の例を説明。

    角運動量というものは,基準点が与えられて始めて定義されるもので,基準
   点を変えると異なる値をもつものです.公転は太陽を基準点とする角運動量,
   自転は地球の中心(重心)を基準点とする角運動量です.なぜ基準点の異なる角
   運動量を足してよいのか,決して自明ではありません.講義ノートの導出過程
   を良く読み直して,重心という点の特殊性が効いてこのような便利な結果にな
   ることを理解して欲しいと思います.

    なお、たとえ導き出し方は忘れたとしても,「公転と自転のそれぞれの角運
   動量を加え合わせたものが全角運動量である」ということが,力学に新たに
   付け加えられたルールではなく,基本法則から導き出されることだということ
   は頭に留めておいて欲しいと思います.力学では,考察の対象を質点の集まり
   と考えれば,あとは,それら質点の従うニュートンの運動方程式がすべてを決
   めてしまいます.ルールを増やす余地はありません.そういうスタンスで対象
   を見る学問体系・自然観なのです.

【メモ】 
量子力学のスタンダードな教え方は違います.まずスピンという量を導入し,
次に全角運動量は軌道角運動量とスピンのベクトル和だと定義し(=回転とは
「空間座標を回転させると同時に各粒子のスピン空間も同時に回転させること」
であると定義し),それを保存するような相互作用だけを許すというような論
理展開にします.さらに古典的類推で考えないようにという注意を喚起するこ
とが多いと思います.ここで気になるのは,もし初等力学で古典的な話を学ん
でいなければ,古典力学には対応するものがかけらほどしかないように誤解さ
せてしまうことになりうることです.だから,初等力学で「公転+自転」の分
解は是非教えるべきだと思っています.

04/11/29(月)講義済み

・・◯N体系での角運動量の保存則
   内力は中心力を仮定して導出。
   × 2体の中心力のみが働くとする要請はややゆるめることができる.
     即ち,回転対称な(多体力を含む)ポテンシャルによる力としても示せる。
     (「解析力学」か「量子力学」の参考書参照)。
・・◯質点系の角運動量保存則の応用例(1)
     原子中の電子の系で、個々の電子の角運動量は一定ではないが、
     全電子の角運動量の和は一定である。核の及ぼすクーロン引力は
     核の位置を基準点とすれば力のモーメントがゼロなので、核のまわりの角
     運動量を変化させない。電子間のクーロン斥力は、核の位置を基準点とす
     る場合、力のモーメントを持っているが、内力なので、全角運動量を変化
     させない。
      なお、質点系の角運動量が、公転の角運動量と自転の角運動量の和とし
     て表せたように、電子の角運動量も、公転にあたる「軌道角運動量」と、
     自転にあたる「スピン角運動量」の和からなる。従って、詳しく言えば、
     保存されるのは、スピン角運動量も加えた全角運動量である。
・・◯質点系の角運動量保存則の応用例(2)
     「地球+月」の系における、地球の自転運動から月の公転運動への角運動
     量の移行
      かなり時間を割いて説明しました。
     保存則をフルに活用したものの考え方(潮汐による海水と海底のまさつにより
     地球の自転が減衰し、地球の角運動量が減少すれば、その分、月の角運動
     量が増加するはずだ)に慣れ親しんでください。
      また、数値を代入しての計算をかなり丁寧に説明しましたが、はしょった
     ところも少しあります。なるべく自分でやりなおしてみて、数値を代入して
     の計算に慣れ親しんでください。

先週、今週は、教科書に載っていないことを話しましたが、来週からは、また
教科書に沿った内容(剛体の回転運動)になります。
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04/12/6(月)講義済み

●「第11章のまとめ」[教]p.158
  【追加項目】
  P : 質点系の全運動量
  L : 質点系の全角運動量
  F : 質点系に働く外力のベクトル和
  N : 質点系に働く外力のモーメントのベクトル和
  R : 質点系の重心座標
  M : 質点系の全質量
  とすると
  d P / d t = F    , P = M d R / d t
  d L / d t = N

  L = (重心運動の角運動量)+(重心に相対的な運動の角運動量)
     例:「公転+自転」,「軌道角運動量+スピン角運動量」

  (質点系の全運動エネルギー)
     =(重心運動の運動エネルギー)+(重心に相対的な運動のエネルギー)

● 連続体・・・(形の変わらない物体) 剛体 
        (形の変わるもの)   弾性体、流体、など 

  連続体は、質点系の質点の個数が無限大の(同時に質点の質量がゼロの)極限と
  考える。質点系一般に対して成立する法則(運動量保存則などのこと)は連続体
  についても成立する。
● 2質点の間隔を一定に保つような内力が働くとき、質点系は剛体になる。

●質点の円運動[教]§12.1
・・●式 (12.1)〜 (12.6)
     角速度,角加速度,向心加速度,接線加速度
・・◯補足:(円運動に限らず)一般の運動についての、接線加速度、法線加速度の定義
     まず,ベクトル解析で習う、1変数ベクトル関数の微分を用いて,
      位置ベクトルを微分して速度ベクトル,
      速度ベクトルを微分して加速度ベクトルを得る.
     次に,速度ベクトルと加速度ベクトル(必ずしも直交しない)を用いて、
      接線単位ベクトルと主法線単位ベクトル(直交座標系を張る)を作り出す.
      (線形代数で習うべき「Schmidt の直交化」の最も簡単な場合にあたる.)
      加速度の接線成分,主法線成分が,接線加速度,法線加速度である.
      円運動の場合,法線加速度を向心加速度と呼ぶ.
・・●剛体を固定軸のまわりに回転させるとき、各部分はすべて同一の角速度を持つ。
・・●例題1 : [教]p.161  
     高校物理で馴染みのある並進運動と同じ式で解けることを認識せよ。
・・●演習問題12 の A の 1[教]p.170 
    接線加速度と(受験勉強で頭に刻み込まれた公式の)向心加速度を
    混同しないように注意せよ。
●剛体の回転運動のエネルギーと慣性モーメント[教]§12.2
  回転軸のある剛体を考える.
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04/12/13(月)講義済み

・・●回転の運動エネルギーは,
      (1/2) × (慣性モーメントという定数) × 角速度の2乗 
   の形に表せる.並進の運動エネルギー,
      (1/2) × (全質量) × 重心の速度の2乗
   と同じ形に書けることに注目.
・・●慣性モーメントの定義
    z軸が回転軸に一致するように座標系をとるものとする.
    連続体の極限(質点の個数が無限大,各質点の質量がゼロの極限)で,
    総和は三重積分に移行する:
          Σ_i m_i ( x_i^2 + y_i^2 ) 
      → ∫ ρ(x,y,z) (x^2+y^2) dx dy dz
    ただし,_ は下付き添字,^ は上付き添字を表す.
・・●慣性モーメントの計算例
    (1) 直方体の慣性モーメントをデカルト座標(x,y,z)で三重積分を実行して
      計算した.
    (2) 円柱ないし円盤の慣性モーメントを円柱座標(r,φ,z)で三重積分を
      実行して計算した.
    (3) 球(内部の密度が一様の場合)の慣性モーメントを球座標(3次元極座標)
      (r,θ,φ)で三重積分を実行して計算した.

    なお,多重積分については,微積II の講義で1カ月以内に学ぶことになる
    ので.微積IIの講義が済んだら、力学IIのこの項のノートを是非復習して
    ください!

     また、微積IIの講義では2重積分までしかとりあげないと思いますが、
    3次元空間での積分には3重積分が必要です。しかし、2重から3重への拡
    張は自分で考えれば納得できる簡単なことだと思いますよ。
    
     球座標でのヤコビアンはどの講義で教えることになっているのでしょうか。
    数学関係の講義ではやらず、他の科目で既知のこととして、あるいは天下り
    に与えて使っているのでしょうかね。

   ところで、図12.7 [教]p.163 に様々な形状の剛体の慣性モーメントが
   与えられています.将来慣性モーメントの計算をする必要が出たときに、教科書
   に載っていたこと、あるいは、講義のノートにまとめを書いたことを思いだせ
   る程度には気にかけておいてください。
    しかし,試験ではこれらを暗記することは求めません.重積分を実行して計算
   することも求めません。必要ならば,問題中に 
   「ただし I=(1/2)MR^2 である」などと書くことにします。

・・×例題2[教]p.164 省略
・・●平行軸の定理
   証明は教科書を参照のこと[教]p.164 (12.18)式 
・・・●棒の端をもって回転させる場合の慣性モーメント [教]§12.2 例1 
     棒がその中心のまわりに回転する場合の慣性モーメントの表式を利用
・・・×「角運動量の重心運動部分と重心に相対的な運動の寄与への分解」の
     剛体への適用によっても「平行軸の定理」は導ける.
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04/12/20(月)講義済み

*ISO14001 カードの配布(1回目)
   "Make a plan ECO Campus / ISO14001 / University of Fukui" と
  記された2004年10月改訂版を物理工学科1年生に配る機会として本講義
  が選ばれたので、配布しました。

●固定軸をもつ剛体の運動の方程式[教]§12.3
・・◯剛体のもつ力学的自由度
    力学的自由度とは?
    直線の向きは2つの角度で指定できる.(例え:矢の向き)
    剛体の向きの指定には3つの角度が必要.(例え:矢に羽根がついていると)
・・◯方程式と各自由度の対応
   一般の質点系について成り立つ方程式に下記のものがある.
      d P / d t = F,  d L / d t = N  
   それぞれベクトル等式なので3成分があり合計6個の方程式である.
   剛体は質点系の特殊なものであるから,剛体の運動についても上式が成立する.
   実は,剛体の運動は上の6個の式で完全に決まることが言える.
   剛体の力学的自由度は 並進3,回転3の合計6である.
   並進の3自由度は,d P / d t = F により時間の関数として決定できる.
   具体的な求め方は P を重心座標を使って書くことでなされる.
   回転の3自由度は, d L / d t = N により時間の関数として決定できる.
   具体的な求め方は,「剛体の回転運動のオイラー方程式」なるものを利用
   するのだが,この講義では触れる余裕がない.

   もし,剛体に固定された回転の軸があるなら,回転軸にそって 座標のz軸を
   とると,d Lz / d t = Nz が軸のまわりの回転の角度の時間変化を
   与えてくれる.
   それ以外の5式は、軸を固定するのに必要な外力を与える式となる。
   (運動を解いた結果,その運動を維持するために必要な拘束力も求まるのだ.)
・・●回転運動と並進運動の類似
    【方程式の類似性】 [教]p.167
     固定軸を持つ剛体の回転運動の方程式は、
     θを回転の角度(単位はラジアン)とすると、
         I d ( d θ / d t ) /d t = N
     これは、並進運動の方程式
         M d ( d x / d t ) / d t = F
     と同じ形である.
・・・●例:剛体振り子 [教]p.167 例5
     「剛体に働く重力は,重心に集中して働くとしてよい」(後述)を利用.

【来年度の講義の準備のためのメモ】 
 学生は,高校生のときから,重力を図示するときは重心に矢印の始点をおく
ことを習慣として身につけているようなので,重力は重心に働くとしてよいと
いうことの説明を急ぐ必要はないだろうとも思う。そうすれば説明順序が教科書と
同じになるのでよい。
 しかし、また、剛体の章の最初の項目として「剛体に働く力の合成」をとり
あげたほうが、説明の順序としては優れているだろうとも思う。

     運動方程式が同じ形になので同じ運動をする。
     方程式の係数(パラメータ)の対応関係に注目。
・・・・◯ ボルダの振り子[教]§12.2 例2
・・・・× フライホイール[教]§12.2 例3
・・・◯運動量保存と角運動量保存の類似性:撃力の働く過程の例
      2つの物体の完全非弾性衝突(2つの物体が衝突し固着する)と
      粘土の弾が回転するドラムに衝突し固着する過程とをパラレルに解く.
       力学IIの講義を始めた最初の年に,定期試験の問題に出題したところ,
      正解がほとんどなかったという思い出がある.しかし考え方さえ知って
      いれば確実にとけたはずと思う.
・・・×自習せよ:定滑車を介した2個の錘の運動 [教]p.171 演習問題 12のBの4 
     数値を入れる手前までを解説する.
     この講義の本筋ではないが,少し複雑なシステムを解く経験もまた重要なので
     取り上げる.試験問題候補としても役にたつ.
     また、並進運動をする力学系で、これと本質的に同じものは? M=I/R^2 として、
      (力m2 g ← 質量m2 - 糸(張力T2) - 質量M - 糸(張力T1) - 質量m1 → 力m1 g)
・・●回転運動と並進運動の相違
    1. m は一定だが、I は変化しうる。
    2. 回転運動には周期性がある(2π回ると元の状態に戻る)
    3. 回転運動にはガリレイ不変性(第15章で学ぶ)がない。
    4. 3次元回転は非可換である(量子力学を学ぶとき重要である)
・・・×相違点2の例:猫の宙返り (→ 今年度は省略する)
     並進運動との対比
     回転軸を共有する2ディスク模型での解析
     1. 前肢と後肢のIの変化によるとする説
     2. 尻尾回転説(回転の周期性による説明)
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04/12/27(月) 冬期休業

05/1/3(月) 冬期休業

05/1/10(月) 冬期休業 ∧ 休日(成人の日)

05/1/17(月)講義済み

新年明けましておめでとうございます.

*ISO14001 カードの配布(2回目)
  2回とももらいそこねた学生は、吉田拓生先生に問い合わせてください。

●剛体の平面運動 [教]13章
・・●固定された回転軸のない剛体の運動を決める方程式:
    重心の並進運動の方程式 と 重心のまわりの回転運動の方程式
    で書き表すのが便利である.
    d P / d t =F,  d L / d t = N からの導出と結果の意味.
・・×例題 1 [教]p.173,4
    後輪駆動車を設計するとき,加速性能を最大にするには,エンジンをどこに
    配置すればよいか.

・・×例題2 [教]p.174
    *水平方向の並進運動の方程式,
    *重心のまわりの回転の運動方程式,
    *動摩擦と垂直抗力の関係(前輪,後輪それぞれについてある.合計2式),
   の4式を導く.未知量の個数は5 (4力と加速度)なので,
   一つの量(教科書では加速度)の値を与えると,他の量は決まる.
・・●斜面を滑らずに転がり落ちる円筒状剛体の運動[教]§13.2, 3 
    1. 働く力の書き出す。
    2. 運動方程式を書き下す。
    3. すべらない回転の場合の回転と並進の関係を使って解を求める
    【考察】慣性モーメントによって運動はどう影響されるか?
        (1)球、球殻、円筒の比較  (2)生卵とゆで卵の比較
    4.力学的エネルギーの保存の確認.
    × 最大静止摩擦係数が与えられたときのすべらずに転がる条件.
    ×【補足】転がり摩擦
      この力学モデルでは,平地を転がる物体は,接地点で滑りがないときは,
      どこまでも転がり続ける.
      → 力学的モデル化の過程で捨て去られた要素がある.
      【参考】転がり摩擦について
×ヨーヨー等の運動[教]§13.4
・・×例題5.[教]p.178
  ×演習問題12-B-4 の続き。
●いろいろな回転運動[教]§13.5
・・●変形可能な部分を持つ剛体の回転運動
   外力の力のモーメントがゼロなら、全角運動量は保存される。
   関係式 L = I ω における左辺のLが変わらない。
   しかし変形により I は変化するので、I に反比例する形でωも変化する。
・・・●フィギュアスケートのスピンアップ[教]p.179
   慣性モーメントの変化が可能な物体における全角運動量保存則.
     腕を体に引き付けると体全体の慣性能率が小さくなるので、角運動量を
    保存させるためには角速度は大きくなることがわかる。
    二十年ほど前,フィギュアスケートのテレビ中継で或る解説者が
       「腕を体に密着させると空気抵抗が減るので回転が速くなります」
   と解説した.この説はどうまちがっているかを説明してみよ.
    また,理論が正しくなくてもその解説者は現役時代はみごとなスピンをする
   ことができたという事実がある.ここから,あなたはどのような教訓を引き出
   しますか.
・・・×なお,この話は一人の文系の学生から聞いた伝聞にすぎず,他の情報ソースで
    は確認できていません。いかにもありそうな話である点が,逆に都市
    伝説(大学伝説)である可能性も高めています.活字になるときは不確かな挿
    話は自粛すべきでしょうが,WEB page ならこれだけ断われば書いてもいい
    でしょうね.

・・●コマと地球の歳差運動(みそすり運動)[教]p.180
   外力のモーメントが回転軸を倒そうとする場合、
     →自転の回転の向きと歳差の回転の向きが同じになる。

   外力のモーメントが回転軸を立てようとする場合、
     →自転の回転の向きと歳差の回転の向きが反対になる。

    歳差の起こる向きの直感的な覚え方 :
     軸が倒れることで自転の角運動量の鉛直成分が減る。
     この減少を埋め合わせるべく歳差という回転が同じ回り方で起きる、あるいは、
     軸が立つことで自転の角運動量の鉛直成分が増える。
     この増加を相殺するべく歳差という回転が逆回りに起きる、
     と考えれば、間違えないであろう。

     この覚え方は、すべての場合について 式 d L / d t = N 
     の意味を適切に表現しているわけではないが、例えば、バイクが転倒した
     あと、バイク全体が水平面内でグルグル回っている状況には、この説明が
     ピッタリあてはまると思います。

     いちいち式にもどって考えたいという人にも、その推論に間違いがなかった
     かチェックする目的にこの覚え方は役立つでしょう。

・・・×歳差のいろいろ
     1. コマの歳差運動
     2. 地球の歳差
        自転軸の北極は天球上を、周期 25800年で円運動する。
        その結果として春分の日が、71年で1日早くなる(∵ 25800/365=70.7).
         (歳差は英語で precession, その語源は「春分が早まること」)
        少なくとも紀元前2世紀には知られていた(ギリシャのヒッパルコス)
     3. 電子のLarmor歳差
・・・×章動 : コマの運動について言うときは、回転軸の傾きが上下に振動する運動
        を意味する。一般の運動状態では、歳差と同時におきている。
        地球の運動について言うときは、完全な等速円運動の歳差運動からの
        あらゆるずれをすべて章動と言う。1745年に、地球の章動のうち
        18.6年周期のものが発見された。古代中国の暦法で19年を「章」と
        呼んだのにちなみ、「章動」の訳語がついた。英語は nutation で
        あり「頭を垂れること」の意味である。

・・×自転車の方向転換[教]§13.5 例6

    止まっているときと違って、走っているときの(すなわち車輪が
    高速回転しているときの)自転車は、なぜ倒れにくいのか、という素朴な疑問へ
    の答でもあります。
    角運動量がほぼ、車輪の自転による角運動量だけで決まるとすれば、
    歳差と同じメカニズムが働くため、重力が転倒させる向きに作用しても
    鉛直軸からの傾きは変わらず、その代わりに鉛直軸の回りの回転が誘起される
    のです。

【講義準備のためのメモ】 
この例は,身体感覚に訴えるところが,歳差運動にまさっているところです.
ハンドル操作がなくても曲がれるという驚きがあるのもよい点です.
 ただし,運動方程式の意味を定性的に断言しすぎという懸念も感じます.並
進と回転運動の両方に依存して,地面から働く摩擦力が決まるという複雑さを
まったく考察の対象にせずにカーブの本質がとらえられるのか?重心の円運動
は議論せず,ヨー角の変化だけでカーブを説明すると,詐欺師の巧妙な口上を聞い
ているかのような感じを与えないか?自転車はなぜ倒れにくいかの説明に限定して
おくのが無難か。

・・× 剛体の自由回転  → 省略する
    安定/不安定な主軸回転
【講義メモ】
以前,宇宙船中で宇宙開発事業団毛利氏が,開いたハサミを回転させて
「安定そうな回転 → 乱れた回転 → 一瞬で上下が逆転 → 乱れた回転 → 安定そうな回転 」
が反復しておきることをデモンストレーションした映像がテレビニュースで放
映されたことがあります.あれがフリーの動画として利用できると嬉しいんで
すが.

×演習問題13 [教]pp.181-182 自習に適した良問が多いです!

・・A-1,2,3,4,5 : 自習に適する.

・・B-1: 以前の講義ではビリヤードはていねいに説明していました.
    → 「自習をすすめる学習項目」へ(試験には出さない)

・・B-2:簡単ではないが,自習に適する. 

・・B-3:頭を使う必要がある.自習に適する.

・・B-4:「猫の宙返り」の話参照.私が言いたかったのは,
      角運動量保存則で片付けるよりもおもしろい味付けのできる話だいうことです.

・・B-6: 人工衛星では向きを変えるのにジャイロを利用するという記述を目
にしたことはあります.(向きを検知するためのジャイロの利用は広範になさ
れていますが,ここで言っているのは向きを変えるためのことです.)もっと
詳しい実際の装置の資料を探しています.実例があると印象に残りやすいので.
 なお,話を不必要に複雑にしないためジャイロは宇宙船の中心にあるという
問題設定ですが,中心になくてもよいということも理解できますね.ジャイロ
がジャイロの重心のまわりに回転した(自転した)場合の角運動量は,どの基準
点からみても,同じ大きさなのですから.(ただし,ジャイロは質量が小さく
ないと思うので,重心に近いところに置くほど衛星全体の慣性能率が小さくなっ
て向きを変えやすくなるということは言える.したがってたぶん衛星の重心に
近いところに置く設計になっているだろう.)

・・B-7: 飛び込みの経験が皆無なので,私にはこういう問題はつくれません.
     ビリヤードならわかる部分があると思っているが,飛び込みの感覚は
     全くわからない.
     原氏という方はKEKの余熱プールで水泳をよくされていたのではないか?

・・B-8: 船の安定装置の回転軸はどちら向きなのか? 図6では(ベクトル L 
の向きが水平だから,自転車と同じく)左右方向だが,舵の効きをわるくしな
いためには上下方向の軸のほうが好ましいのではないか?左右方向の軸だと前
後の揺れは抑えられないが,そのほうが都合のよい用途の船があって,それが
念頭にあるのか?
 小学生のとき友人から「第二次対戦中,魚雷を受けて舵の壊れた米国空母サ
ラトガでジャイロを人力で回して方向転換したという映画を見た」という話を
聞き,印象深くて何度も思い出したので今でも船名まで覚えていますが,その
話の場合は鉛直軸ということになる.今は水平軸もあるのか?実例の資料を探
しています.ジャイロの径は,質量は,回転速度は,構造は? 見つけられた
ら,URLへのリンクを張ります.

資料1(ページ内で"Gyrostabilized ship" を検索してください).

●剛体に働く力のつり合い [教]14章
・・●剛体に作用する力のつり合い条件 [教]§14.1
      Σ F = 0 , Σ N = 0 
    Nの基準点をどこにとっても、2式の表す条件は数学的に同値であることが示せる。
・・●剛体のつり合い問題の解き方[教]§14.2
・・・●2人で荷物を吊した棒の両端をかつぐときの荷重の比の計算[教]p.184 例1
     力のモーメントの基準点の取り方により、いろいろな解き方がある。
・・・×自習に利用できる類題:[教]p.185 例題1,2
・・・×理解を測るのに向く少し難しい問題:[教]p.185 例題3
      【補足】壁からも摩擦力が働く場合は、釣り合い条件だけではすべての
          力が一意には決まらない。→ 卒業研究としても少し難しいレベ
          ルの問題(かつて林先生指導)
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05/1/24(月)講義済み

・・・◯補足問題:運動が平面内に制限されない場合の例題
       「正三角形の頂点に脚のある三脚テーブルの上に物体を置いたとき
        各脚にかかる荷重を求めよ」
        条件 ΣF = 0, Σ N = 0 から求める解答を示す。
     【補足】4本脚テーブルでは、剛体に働く力のつりあい条件だけでは一意
         に決めることができない。計算で求めたいなら、テーブルや床の
         たわみを考慮して決めるのが適切であろう。
・・◯剛体に働く力の作図による合成法
      教科書は意図的に省いたと思われる。理由は力学という学問体系としては
      枝葉末節だからではないかと思う。
    (1)作用線にそっての作用点の移動ができる 
      → 作用点の同じ力を平行四辺形則で合成できる。
    (2)平行な力は「てこの原理」で合成できる
      → ただし偶力は合成できない。

       (1)だけ覚えていればよろしい。なお、徹頭徹尾作図で解こうとして
       はいけない。作図で簡単に扱える部分だけ作図で対処し、そうでない
       部分は、数式で解くのが賢い解き方である。数式ならどんな場合も完全
       に扱える。作図は便利な場合と特には役にたたない場合がある。

    補足:剛体に働く重力の合成:
        剛体に働く重力は、その重心に集中して働くとしても、
        剛体の運動は全く同じである。これは、Σ F, Σ N が不変である
        ことから導くことができる。

    補足:床面から剛体に働く垂直抗力の合成:
        底面内の1点に集中して働くとすることができる。

        【補足】証明は省略しましたが、垂直抗力が同じ向き(direction 
            および senseが同じ)の力であることを利用します。
            なお、底面が凹んだ図形のときは「その図形の凸包内の1
            点に働く」というのが正確な記述です。「トツホウ」は
            数学辞典で調べてください。

    例題:箱を水平に押したとき転倒するかどうかを作図で判定する
          (すべりださないだけ十分大きな静止摩擦係数を仮定する)

    【補注】求めたのは、傾き始めるのに必要な条件ですが、そのときに一番強い
        力が必要なので、傾き始めれば、あとは同じ力で押し続ければ転倒
        します。
         また、箱の重心の高さが関係しないのはおかしいように思ったかもし
        れませんが、実際、傾き始めるのに必要な力には重心の高さは無関係
        です。ただし、傾き始めたあと元に戻らないにようにするのに必要な
        力は、重心が高いほど(傾きの角度の関数として)急速に減少します。

●慣性系[教]§15.1
    ガリレイの相対性原理 まで解説
・・・・× ガリレオ・ガリレイの苗字と名前
●見かけの力[教]§15.2
  教科書と同じレベルの内容を、教科書とは独立に説明する。
・・●(並進運動の)慣性力
    導出
    等価原理とその応用 
      車内の風船のただよって行く向き
      単振り子/ばね振り子の周期の変化
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05/1/31(月)講義済み

・・●一様回転座標系での慣性力
    「一様回転」とは「固定された回転軸のまわりの,一定角速度の回転」の意味です.
    ω を座標系の回転の角速度ベクトルとすると,この ω は静止系で見ても
    一様回転系で見ても時間変化しない定ベクトルである.

    静止系座標(r)と一様回転座標(r')との間の変換を r = U r' とすると,
        (r と r' は3行1列,Uは3行3列の行列である)
    d(dr/dt)/dt = U d(dr'/dt)/dt + 2 dU/dt dr'/dt + d(dU/dt)/dt r'
    右辺の第2項がコリオリ力,第3項が遠心力の加速度(のマイナス1倍)である.
    ここで,u' を「ベクトル u の,一様回転系での成分」の組であるとすると,
      (dU/dt)u' = U(ω'×u') 
    が成立する.×は外積です.各自で確かめてみよ.この関係式を用いると,
      (Coriolis force)'    = - 2 m ω' × v' 
      (Centrifugal force)' = - m ω' × (ω' × r') 
    という結果が得られる.

・・・・・・× これまでに学んだこととの関係を徹底的に理解しようとすれば,
        ここでベクトルとその成分の意味を整理しなおす必要があると思うが,
        さしあたり割愛させてもらいます.



・・・●コリオリ力と遠心力の特徴の比較表
     前者はωの1乗に比例し,後者はωの二乗に比例する.
     前者は回転系での速さに比例し,後者は回転軸からの距離に比例する.
     前者は回転軸との相対位置に無関係.
     前者と後者は,力の方向が,全然違う形の数式で決まる.

・・・●遠心力の説明 
     糸の先に質点を接着して等速円運動させているのを静止系で観測する場合と,
     その質点と同じ角速度で回転する座標系で観測する場合の,運動の解釈の違い.
      静止系での解釈では,糸の張力のみが働き,それが円運動の向心加速度
     の原因(これを向心力という)となっている.
     回転系での解釈では,糸の張力と,遠心力が働き,それらが釣り合う.
     合力がゼロのため,加速度はないはずで,それは静止していることと矛盾しない.
     【注】「張力」,「向心力」は真の力,「遠心力」は見かけの力(慣性力)
・・・●遠心力と重力
     地球の自転による遠心力.最も強くなる赤道では重力の 1/300程度.
     重力加速度に1/300程度の補正が必要なのか? 
     否,重力加速度をいうとき,すでに遠心力も含めて考えているのだ.
     【問】 福井(北緯36°での遠心力の加速度を求めよ.
     【補足】カーブする車のなかに浮かぶ風船の動きを考えてみよ(再び等価原理).
・・●コリオリ力
     静止系で座標原点から射出された質点の等速直線運動は,回転系では(図を
    描いてみるとわかるように)曲線の軌跡を描く.この運動に関しては,遠心力
    が働いても,直線軌道の方向に加速させるだけであって,カーブさせること
    はない.∴ 遠心力とは別種の慣性力が働いているとしなければ,運動方程式
    を成り立たせることはできない.それがコリオリ力である.

    【注】静止系で運動方程式により計算した結果を,回転座標系に座標変換すれ
       ば用は足りるので,回転系で運動方程式が成り立たなくても本質的には
       困らない.しかし,ちょっとした細工で成り立つようにできるなら,
       それは便利なことです.

・・・●コリオリ力による,地球的規模で吹く風の方向の説明
     地球の大気の大循環と貿易風、偏西風 

      【注】赤道は暑いので上昇気流,北極・南極は寒いので下降気流は
         理屈でわかるので,コリオリ力の働きも考えると,貿易風は
         理屈だけでわかる.しかし,偏西風については,さらに地球
         の大気の対流パターンについても知らないと説明できません.
            「地球のことには特に興味はない」などと言わず,
         地理や地学で中緯度高圧帯などの言葉を勉強した覚えのない人は,
         今,高校の地図帳でも見てください.サハラ砂漠などの大規模
         な砂漠は中緯度高圧帯があるから砂漠なのです.地球環境に関
         連した知識はこれからは技術者の常識的教養になると思います.

     台風は左巻き (一方、南半球の低気圧は右巻き)
     地衡風 → 参考になるWEB page 「地衡風」、「大気力学の基礎」

福井に大雪が降るときの雲の衛星写真を見ると、雲は日本海の北岸を流れる対
馬暖流から立ち昇る水蒸気を吸って生成することが明らかに見て取れます。そ
の雲が風に流されて日本海の上空を横断し福井までやってきて山を越えるとき
に(熱力学参照のこと)雪を降らせるわけです。さて、そのときの気圧配置を天
気図で見てみると、、、、おや、風は気圧の高いほうから低い方に吹いている
のではないらしい。西高東低の典型的な冬型の気圧配置で等圧線はほとんど南
北方向に走っている。風がそれに垂直に吹くなら西から東へ吹くはずなのに、
雲の筋は南東か南南東の方向に風が吹いていることを示している。風は等圧線
のグラジエント方向というよりはむしろ等圧線に沿って吹く傾向のほうが強い
ようだ。なぜそのような直感的説明にあてはまってくれない吹き方をするのだ
ろう?
 そういえば、地図帳を見ると、貿易風や偏西風も「南北に吹く風がコリオリ
力で東西に傾いた」という説明から想像される程度の傾きではなく、ほぼ東西
方向に吹いているように風向の矢印が描いてあるぞ。また、木星や土星はきれ
いに横縞がついているが、それはこれらの惑星でもほとんど完全に東西方向を
向いた強い風が吹いているからに違いない。
     *     *     *     *     *
 それらすべての理由は、大きなスケールで見ると、風は圧力とコリオリ力
が釣り合う方向に吹くからです。

・・・●地球の自転によるコリオリ力の強さ
    1. 緯度90°(北極点や南極点)での場合にあてはまる粗い評価
      地球が球体ではなく,円板状で,北半球は上の面,南半球は下の面
      に対応すると考える場合の計算です.
    2. 緯度θの地点での水平面内の運動への影響
       ベクトルの代数計算(成分に分けたり,外積の分配則を使ったり)が
       複雑ですが,ベクトル解析の復習も兼ねて,ノートをじっくり読み直
       してみてください.
        結局,水平方向の力については,1. の結果に sin θ が掛けられる
       だけということが示せました.
        コリオリ力の鉛直方向の成分は,重要な働きはしないでしょう.
       なぜなら,鉛直方向には他に重力(と遠心力の合成したもの)という強い
       力が働いているからです.
        一方,水平方向には他に働く力がないので,コリオリ力の独壇場と
       なり,コリオリ力が,諸々の運動の方向を決定してしまうのですね.
    3. 数値例:
      i) 球技
      ii) 台風など(あるいは大規模な大気・海水の移動)

・・・◯コリオリ力と磁力(ローレンツ力)の類似性
     高校で習ったローレンツ力は皆さんよく覚えているでしょう.
     コリオリ力のωをBに置き換えるとローレンツ力になるんです.

・・・・×原子核の高速回転状態と強磁場下の超伝導体の類似性

× 直線運動以外での仕事とエネルギー[教]§10.4 → 他の授業でもやるようなので省略します.
  教科書の内容と補足。すでにベクトル解析で学習済みの
  ナブラ記号と線積分を使って運動方程式の積分の一般論を説明。
   *時間で微分することによる 位置→速度→加速度 の関係
   *時間で積分することによる 位置←速度←加速度 の関係
   *運動方程式 ma=F による「循環論法」(力→加速度→速度→位置→力)
     2年前期の応用数学Iで習う 常微分方程式の解法 を楽しみにせよ。
   *運動量と力積の関係を運動方程式の第一積分として導出する。
   *運動エネルギーと仕事の関係を運動方程式の第二積分として導出する。
   *力が位置の関数である場合の線積分による仕事の表現
   *力がポテンシャルを持つ場合の仕事の表現と力学的エネルギー保存則の導出

×「(参考)万有引力による位置エネルギー」はとりたてて別に説明はしない.

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05/2/7実施済み

定期試験。おおよその範囲は教科書で9章〜15章にあたる部分です。
ただし、教科書にある事項でも講義で触れなかったことは範囲外、
教科書に載っていないことでも講義で触れたことは範囲内です。
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自習を薦める学習項目(1)

大学教養課程の初等力学で伝統的にカバーされた範囲のうち、この講義では
省略したけれど、できれば自習したほうがよいと思う項目を列挙しておきます。

[準備中]

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最終更新日: 2005/10/24
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