宇宙線μ粒子を利用した実験

 


・宇宙線μ粒子による巨大物体内部探査法の開発

我々が普段何気なく生活している間にも、地上には宇宙から高エネルギーの放射線が常に降り注いでいます。この放射線は、地球の空気の層の中で透過性の強いμ粒子に変化しますが、このμ粒子を用いると、巨大な物体の内部を探査することが出来ます。

宇宙からやって来る放射線は宇宙線と呼ばれ、地表に到達するまでに空気中の原子核と反応しπ中間子などを大量に生成します。生成されたπ中間子はその後崩壊し、μ粒子となって地表に降り注いできます。このようなμ粒子は1 cm2あたり1分間に約1個の頻度で地表にやって来ています。μ粒子は透過性が強く、特にエネルギーの高いμ粒子は厚い岩盤をも透過することが知られています。ところが、シミュレーションの手法で鉛や金などといった密度の高い物資中での宇宙線μ粒子の振る舞いを調べてみたところ、宇宙線μ粒子といえども、このような高密度物体に衝突すると数十cm程度通過しただけでエネルギーを失い、物体中で停止したり、進行方向が曲げられたりすることがわかりました。

この結果から、我々は、X線の代わりに宇宙線μ粒子を利用して、X線では探査できないようなある程度大きい物体の内部探査を行うことができるのではないかと考え、さらに詳しいシミュレーションを行っています。実際、宇宙線μ粒子を利用して火山内部のマグマの動向や古代遺跡の内部の構造などを探査する研究を行っている研究者もいますが、我々は、主として地中や古代遺跡内部に埋もれた数十cm程度の物体を探査する方法の開発を目指しています。