以下は latex file です。
%==============================================================================
% yitp99a.tex : 99/2/7,14
% For proceedigs of a work shop held at Yukawa inst. for theor. phys. (YITP)
% My talk was on Nov 4, 1998
%
% 1998年11月4日、京都大学基礎物理学研究所。
% 研究会「不安定核の構造と反応」1998年11月4〜6日
% 素粒子論研究 ?巻?号(?年?月) ただし原稿落ち。
%
\documentstyle[12pt]{article}
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\evensidemargin=-5mm % even
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\newcommand{\mysection}[1]{\vspace{\baselineskip} \noindent \underline{#1} \\}
\newcommand{\vecrp}[0]{{\vec{r}\,}'}
\begin{document}
\baselineskip=0.6cm
% \pagestyle{empty}
\begin{center}
{\Large
正準基底によるHFBの解法と連続状態の対相関
}
\end{center}
% \vspace{\baselineskip}
\begin{flushright}
田嶋 直樹 (福井大学・工学部)
\end{flushright}
% \vspace{\baselineskip}
本論では、Skyrme型の相互作用を用いたHartree-Fock-Bogoliubov (HFB)法の
「HFB正準基底」による解法に関連して、対相関へのカットオフの必要性と導
入方法について議論する。
中性子過剰核研究の意義、中性子過剰核では対相関への連続状態の寄与を正し
く考慮することが重要であること、そのためには座標表示での
Hartree-Fock-Bogoliubov (HFB)解を求めることが必要であること、それには、
HFB正準基底による解法が有利であること、私のアプローチの特徴等の説明は、
文献\cite{Taj98a}または\cite{Taj98ws1}を参照参照していただきたい。
% 中性子過剰核の重要性と2本の核子滴下線間にひろがる原子核の存在可能領域
% のうち未知領域の大半は中性子過剰核であるということ、
% 宇宙における元素合成のr過程パスが、中性子のフェルミ準位が2MeV程度の中
% 性子過剰核を縫い進むこと、
% Skyrme力によるHartree-Fock法の特徴、
% 対相関が原子核の変形を左右する場合の多いこと、
% 連続状態の対相関による中性子滴下線予想位置の大幅な変化の可能性
% カットオフを含まないHFBの正準基底解法の定式化
% なお、HFBの解法には種々の方法があるが、私の研究の特徴は、
% 1) 球形核に対してでなく変形核をも扱えるものである。
% 球形核への解法は15年前から実行可能であった。しかし、変形した核でしかも
% 連続状態まで巻き込んだ対相関を記述することには現在でも困難がある。
% 2) 調和振動子基底による展開で、行列の対角化による解法でなく、3次元正方
% メッシュという座標表現で解く。
% これは中性子ハローなど、薄く広がった中性子の領域の扱いに是非とも必要な
% ことである。
% 3) 正準基底による解法としても、基底間の直交性を保つためのラグランジュ
% 乗数の導入方法が、論文\cite{RBR97}のものより正しい形になっている。また、
% 収束の加速に関しての
% 4) 解法の不完全さに起因して認識されなかった、対相関による解の崩壊現象を
% 正しく指摘し、カットオフによる解決策を研究している。
% 以降では、対相関へのカットオフに論点を絞る。
\vspace{\baselineskip}
\noindent
\underline{HFB正準基底(軌道)の数を制限することでカットオフは不要になる
か}
HFB方程式の解は、Bloch-Messiah定理により、
次式のようにBCS型に表現することができる。
%
\begin{eqnarray}
|\Psi \rangle & = & \prod_{i=1}^{K}
\left( u_i + v_i \; a^{\dagger}_{i} \; a^{\dagger}_{\bar{\imath}} \right)
| 0 \rangle, \label{eq:hfbnpsi}\\
a^{\dagger}_i & = & \sum_{s} \int d \vec{r} \; \psi_{i} (\vec{r},s) \;
a^{\dagger}_{\vec{r}s}
\;\;\; \mbox{ : HFB正準基底}. \label{eq:hfbna}
\end{eqnarray}
%
偶々核の基底状態では時間反転対称性のため
$\psi_{\bar{\imath}}$は$\psi_{i}$を時間反転操作したものになる。
正準基底によるHFB方程式の解法とは、正準基底(\ref{eq:hfbna})の波動関数
$\{ \psi_i \}$を変分させることで、BCS型状態(\ref{eq:hfbnpsi})をHFB解へ
と収束させようとするアプローチである。
(\ref{eq:hfbpsi})式の乗積$\Pi$で掛け合わせる項の数$i_{\rm max}$は、原
理的には一粒子波動関数 $\psi_i$を定義する空間の次元の半分となるが、実
際の計算では、それより遥かに小さい数に設定する\cite{Taj98a,Taj98ws1}。
% here !!
レンジが零である相互作用を用いる場合、対相関にカットオフを導入する必要
がある\cite{TOT94}。しかし、もし、正準基底の数を有限個に制限すれば、カッ
トオフがなくても対相関は発散せず物理的に意味のある基底状態が得られるの
ではないか、という期待も湧く。
しかし、その期待は、はずれた。即ち、実際にgradient法で、
(\ref{eq:hfbpsi})式の変分関数でのハミルトニアンの期待値を極小化するコー
ドを作製し、様々な場合について適用してみたところ、対相関ギャップが異常
に大きくなる場合があることが判明したのである。
具体的に発散の起きるときの状況を述べると、長ステップにわたってgradient
法\footnote{
gradientの方向は、変分空間が同じでも、それを定義するパラメータの設定
のしかたに依存して変わるが、設定方法をいくらか変えても、同様の現象が
起きるようである。
}
による発展を続けると、収束したように見えたエネルギーなど
の量に、急にジャンプがおきることがある。その原因を調べてみると、高いエ
ネルギー期待値を持ったHFB正準軌道の波動関数が、あるとき急激に\footnote{
現在までの経験では、一粒子ポテンシャルが偶奇性を保存する解を
求める場合に急激な収縮の契機になるのは、パリティの破れである。一時的に
パリティが破れてその変化の結果、点状収縮が起き、その後、再びパリティの
固有状態に復帰する。
}
点状に縮小する現象のためだと分った。
このような収縮が起きる理由は単純である。
Hamiltonian密度は、運動エネルギー密度 $\tau$、密度 $\rho$、
対密度 $\tilde{\rho}$などを用いて書けるが、
$i$番目の正準基底軌道の占拠振幅 $v_i$、$u_i$に対するそれぞれの
密度の依存性は、
%
\begin{equation}
\tau, \rho \propto v_i^2,
\;\;\;
\tilde{\rho} \propto u_i v_i,
\end{equation}
%
である。高いエネルギーの状態については、$v_i \ll 1, u_i \doteq 1$
であるから $u_i v_i \gg v_i^2$ が成り立つ。点状収縮による運動
エネルギーの損失は $v_i^2$に比例し、$u_i v_i$に比例する対相関エネル
ギーでの利得より遥かに小さいので、点状収縮が起き得るのである。
一部ではあっても一粒子波動関数が点状に収縮しているような解は物理的に無
意味である。ただし、ほとんどの場合、点状収縮の前に、ほぼ安定な解が得ら
れている\footnote{
しかし、gradient法の取り方によって、安定性に大きな変動が見られる。
また、準安定状態が得られない場合もあるかもしれない。
状況によっては、いくつかの正準基底波動関数が点状に収縮した物理的に無意
味な解と有意味な状態の間にエネルギー上の障壁があるかもしれない。その場
合は、有意味な空間のみを考えればよいので、カットオフは不要であろう。し
かし、計算結果からわかったように、障壁がない場合が多い。あるいは、全て
の場合に障壁がなく、長い gradient法による発展をさせれば、必ず点状収縮
への崩壊が起きる可能性もある。
}
ので、そのような準安定状態が得られた場合には、それで解を代用すればよい
という考え方もあるであろう。しかし、この平均場模型が広く利用されるよう
な信頼性のあるものになるためには、解を求めることに頻繁に失敗するような
ものでは不十分で、確実に物理的に意味のある解が求まるようにしておかねば
ならないと思う。そこで、カットオフをうまく導入して、多くの場合に現れる
準安定状態に近い真の安定な解を作ることを目標に研究を進めることにした。
そこで、Skyrme力のようにレンジが零の有効相互作用にどのようにしてカット
オフを導入するかについて、以降に示す2)〜4)の3通りの方法を考えた。後述
のように、現在までに案2)で一応の解決を見たが、さらに、他の2案を検討中
である。
\vspace{\baselineskip}
\noindent
\underline{2) Seniority力の場合のカットオフの付け方の類推でつけてみる。}
\begin{equation}
v_{i \bar{\imath} j \bar{\jmath}} = -G
\;\;\; \Rightarrow \;\;\;
v_{i \bar{\imath} j \bar{\jmath}} = -G f_i f_j
\end{equation}
$f_i = f(\epsilon_i)$, $\epsilon_i$ は $i$番目の正準基底軌道の
(対相関を含まないHartree-Fock場だけの)平均場近似の
一粒子Hamiltonianのエネルギー準位にとることが多い。
例えば、Fermi関数型、
%
\begin{equation}
f(\epsilon) = \frac{1}{
1 + \exp \left(
\frac{\epsilon-\epsilon_{\rm cut}}{\epsilon_{\rm smear}}
\right)
}
\end{equation}
%
にとることがある。ここで、$\epsilon_{\rm cut}$は
カットオフする一粒子エネルギー準位であり、$\epsilon_{\rm smear}$
は、HF+BCS解を種々の条件の変動にたいして連続的に変化するように定義するためにカットオフ関数を滑らかにするための幅を与えるパラメータである。
例えば、$\epsilon_{\rm cut}$をFermi準位より$1 \hbar \omega$ = 5〜10OMeV
くらいにとり、$\epsilon_{\rm cut}$は 0.5MeV程度で思わしい振るまいが得られることが
経験的に知られている。
HF+BCS方程式とは、Pairing channelにおける相互作用が
状態の波動関数に無関係に決まるとき、たとえば、seniority力のようであるとき
にHartree-Fock-Boguliubov方程式がそのように簡略化できるのである。
このようなカットオフ関数付の関数の場合も近似的にHFB方程式はHF+BCS方程式
になるはずである。ただし、$f_i$ が $\epsilon_i = \langle i | h | i \rangle$
の関数であるとすれば、厳密には相互作用の行列要素は状態の波動関数
$\left\vert i \right\rangle$ によるので、近似的なものである。
%
\begin{equation}
V_{\rm pair} = -G
\left(\sum_{i >0} a^{\dagger}_{i} a^{\dagger}_{\bar{\imath}} \right)
\left(\sum_{j >0} a_{j} a_{\bar{\jmath}} \right)
\end{equation}
\begin{equation}
V_{\rm pair} = -G
\left(\sum_{i >0} f_i a^{\dagger}_{i} a^{\dagger}_{\bar{\imath}} \right)
\left(\sum_{j >0} f_j a_{j} a_{\bar{\jmath}} \right)
\end{equation}
これを模倣して、
\begin{equation}
{\cal H}(\vec{r}) = {\cal H} (\rho(\vec{r}),\tilde{\rho}(\vec{r}))
\;\;\; \Rightarrow \;\;\;
{\cal H}(\vec{r}) = {\cal H} (\rho(\vec{r}),\tilde{\rho_{\rm c}}(\vec{r}))
\end{equation}
ここで、$\rho_{\rm c}$は下記の形でカットオフをつけた対密度である。
%
\begin{equation}
\tilde{\rho}(\vec{r}) = \sum_{i>0} u_i v_i |\psi_i (\vec{r})|^2
\;\;\; \Rightarrow \;\;\;
\tilde{\rho}_{\rm c}(\vec{r}) = \sum_{i>0} f_i u_i v_i |\psi_i (\vec{r})|^2
\end{equation}
%
エネルギー密度汎関数は相互作用から決定されるものであるが、
計算はもっぱらこのエネルギー密度汎関数を経由して行われるため、
もとになる相互作用を考えず、エネルギー密度汎関数の形を直接修正して
波動関数の点状収縮による破局を回避することができる。
計算コードを作製する観点からは、この方法がもっとも簡便である。ただし、
そのような修正後のエネルギー密度汎関数をあたえる相互作用は非常に
人為的なものになる。
このようなハミルトニアン密度を与える対相互作用は、人為的な形のものになるが、
計算に必要なハミルトニアン密度が簡単な形になることから、このような
形でカットオフをつけることを試してみる。
ただし、$f_i$が波動関数に依存することからくる変分を無視せずに
正確に取り入れることが肝要であると思われる。
そのためには、エネルギー$\epsilon_i$を経由して$f_i$を決めると、
変分の停留条件を表す方程式に非常に複雑な項が出現するため、
むしろ、波数ベクトル大きさの期待値 $k_i^2 = \langle i \vert
\vec{\nabla}^2 \vert i \rangle$ =
$- \int \psi_{i}^{\ast} (\vec{r}) \triangle_{\vec{r}} \psi_i (\vec{r})
d \vec{r}$を採用することにしよう。これでも点状収縮した波動関数は
メッシュスペーシング程度の波数を持つので、非常に高い波数がカットオフ
されることで、解の崩壊が抑止できると考えられる。
即ち、
%
\begin{equation}
f_i = f (k_i^2) = \exp \left( -\frac{\mu^2}{4}k_i^2 \right)
\end{equation}
%
$mu$は、対相互作用を定量的に正しく記述すると言われる Gogny D1力の
長距離引力の動径依存性と同じ、1.2fmにとった。
このような形でカットオフを導入し、変分計算を正確なgradientを用いて行なった
ところ、解は点状に崩壊することなく、物理的に尤もな解が得られることが
示された。
ただし、このカットオフ導入方法の短所として、すべての一準粒子状態をその固有状態として与える一準粒子Hamiltonianが存在しないことである。これは、
状態依存したHamiltonian密度を設定したことに起因する。
一準粒子Hamiltonianとは、運動エネルギーとHartree-Fockポテンシャルからなる
$h$と、対相関ポテンシャルからなる $\tilde{h}$を2×2の行列にまとめた
ものであり、下記のような形で与えられる。
%
\begin{equation}
h_{qp} =
\left(
\begin{array}{cc}
h & \tilde{h} \\
\tilde{h}& h
\end{array}
\right)
\end{equation}
%
時間反転不変性を仮定して、時間反転対のうち片方のみを考えるように
簡略化してあるのでHermiteな行列になっている。
HFB解を求めるにあたっては、gradient法による変分に加えて、
一準粒子Hamiltonianの対角化を併用することが解への収束や、ローカルミニマム
へのトラップを防ぐのに有効であることが経験的に分かっ来ているのだが、
その対角化が正確にはできなくなるのである。\footnote{
平均的な一準粒子Hhamiltonianを定義すれば、低精度な解の段階では役に立つが、
高精度な解になると、対角化によってむしろ解から遠ざかる結果になる。
}
\vspace{\baselineskip}
\noindent
\underline{3) 相互作用に対密度依存性を導入する}
これはまだ試していない方法であるが、より簡略なカットオフの導入方法と
して考えられるものである。この考え方は、SKyrme力の3体力を
密度依存性に読み変えたときにすでに導入されていて、これは、それを対密度
依存性にまで拡張しようとするものである。
%
\begin{equation}
{\cal H} = \frac{1}{8} v_{\rm p} \left( 1-\frac{\rho\left(\vec{r}\right)}
{\rho_{\rm PS}} \right) \tilde{\rho} (\vec{r})^2
\end{equation}
%
を下記のように修正すればカットオフのない対相関による点状崩壊を防げるのでは
ないだろうか。
%
\begin{equation}
\tilde{\cal H}_{\rm c} = \frac{1}{8} v_{\rm p}
\left( 1-\frac{\rho\left(\vec{r}\right)}{\rho_{\rm q}} \right)
\left( 1-\frac{\tilde{\rho}\left(\vec{r}\right)}{\tilde{\rho}_{\rm q}}\right)
\left\{\tilde{\rho} (\vec{r})\right\}^2
\end{equation}
%
$\rho_{\rm q}$は相互作用がquenchされてちょうど零になる核子密度を表すパ
ラメータであり、$\tilde{\rho}_{\rm q}$は同様のことを対密度にも拡張した
パラメータである。
このようなエネルギー密度を与える相互作用は、純粋な対密度依存性と考え
るしかない。
利点は、一準粒子状態を対角化によっても求めることができることである。
\vspace{\baselineskip}
\noindent
4) 運動量依存性による自然なカットオフの可能性
Skyrme相互作用の $\frac{t_1}{2} \left( \vec{k}^2 \delta \delta \vec{k}^2
\right)$ 項は、高い運動量の状態間の遷移に対して、斥力的な寄与をする
利点は、対角化ができることに加えて、相互作用パラメータを通じてカットオフが
自然に入れることができるかもしれないことである。しかし、付加的に
カットオフを併用しないと点状収縮を避けることができない可能性もある。
この事情は、我々の論文で議論した。
\begin{thebibliography}{99}
{\small
\baselineskip=0.5cm
\bibitem{Taj98a} % Hartree-Fock-Bogoliubov for deformed neutron-rich nuclei
N.~Tajima,
proc. XVII RCNP Int. Sym. on Innovative Computational Methods
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\bibitem{Taj98ws1} %
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\bibitem{TOT94} % nmbcs
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}
\end{thebibliography}
\end{document}