以下は latex file です。
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% rcnp93k : 23,25,26/mar/94
% detailed report of the computing supported by RCNP for the fiscal year 1993.
% << Kyoudou Riyou keisan Hi Houkoku >>
%
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\begin{document}
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% \pagestyle{empty}
\begin{flushleft}
共同利用計算費使用報告書(1993年度) \hspace{4.5cm} {\Large No.93-A-04}
\end{flushleft}
\begin{flushleft}
研究テーマ \hspace{1cm} 中性子過剰核の変形
\end{flushleft}
\vspace{\baselineskip}
\begin{flushleft}
使用責任者 \hspace{1cm} 田嶋直樹 \hspace{1cm} (東大・教養)
\end{flushleft}
\begin{flushleft}
共同研究者 \hspace{1cm} 大西直毅、高原哲士
\end{flushleft}
\vspace{\baselineskip}
\mysection{Abstract}
We have used a Deformed Hartree-Fock+BCS code {\em ev8} developed by
P.~Bonche et al. to calculate the ground states of 751 even-even
nuclei with $2 \leq Z \leq 82$ and $N$ ranging from outside the proton
drip line to beyond the heaviest isotope ever synthesized.
The code features the usage of a Cartesian mesh representation of
single-particle wavefunctions, which is more appropriate than
oscillator-basis expansions to study the asymptotic behavior at large
$r$ and exotic shapes like super and hyper deformations.
We have employed the Skyrme SIII force, which allegedly have the best
$N-Z$ dependence among those proposed so far.
The results of our calculation contains the binding energy, densities
$\rho_{\tau}(x,y,z)$ ($\rightarrow$ even-multipole deformation,
radius, skin and halo), single-particle levels, pairing gaps and so
on. We will publish them after finishing additional investigations of
possible shape-coexisting solutions.
We have also developed a method to determine the strength of the
pairing interaction $G$ in terms of the continuous spectrum
approximation based on the Thomas-Fermi single-particle level density.
\mysection{1.物理的背景}
現在の原子核研究の大きな目的のひとつに、不安定核の研究によって、
β安定線近傍に限定されている我々の原子核についての知識を拡大することが
ある。最近では、$^{11}$Liに代表される短寿命核ビームの開発によって、実
験的研究はこの目的に向かって大きく進展した。一方、理論面では、基底状
態の結合エネルギー・形状等を再現する各種の有効理論の改良が大切である。
そこで用いられる既存のパラメータ・セットはハイゼンベルグの谷に沿った狭
い領域にフィットされたので、アイソ・ベクトル依存性については信頼性が低
い。そこで、中性子過剰核から陽子ドリップ線にわたる多数の偶々核の基底状態
を計算することで、実験と比較できる部分からはその理論のアイソベクトル依
存性の良否を知ることができる。また、実験的に未知の核種についてはその諸
性質の予想を行うことになる。
現在までなされたこの種の「(N,Z)平面上で大域的な計算」のうちで注目され
るものは、液滴(droplet)模型とStrutinski流の殻補正を組み合わせる手法
によるものである。なかでもMoellerとNixによる一連の計算が注目される
(93年8月のプレプリント)。
しかし、
液滴+殻補正法の不安定核への外挿の信頼性は明らかではない。液滴部分のパ
ラメータや、一粒子ポテンシャルのアイソ・スピンによる変化が、現在のデー
タから高精度で決定できるとは、とても断言できない。そこで、別の理論的
枠組にもとづく計算を行い結果を比較することが大切である。
そのために、我々が採用するのは、Skyrme型有効相互作用を用いた
Hartree-Fock+BCS理論である。この理論は完全に微視的であり現象論性がより
低いから、外挿の信頼性はより高いはずである。また、Skyrme力は、ゼロレン
ジであるために取扱いが簡単であるにも拘らず、種々の実験事実の再現性がよ
いため、幅広く用いられてきた。例えば、Hartree-Fock(HF)法や
Extended-Thomas-Fermi近似法で基底状態の再現・予想に、乱雑位相近似、生
成座標法、配位混合殻模型などで励起状態の計算に、また、時間依存HF法で核・
核衝突に応用され、成果を収めてきた。
我々の計算から得られる物理量の例は、束縛エネルギー、変形(偶多重極成分
のみ)、陽子・中性子(対)分離エネルギー、対相関ギャップ、スキンの厚さ、
ハローの有無等である。
相互作用としては、現在までに提唱されたSkyrme力のパラメータセットのうち
で(非圧縮性が大きすぎることをのぞいて)最良と思われるSIIIを用いる。
Skyrme力によるHartree-Fock計算は、最近のものでは、Dobaczewskiらによる
大域的な計算があるが(プレプリント)、球対称性を仮定した計算なので、変
形領域については実際の核の状態に対応しない。また、SkPという(対相関を
扱うことを主目的にした)相互作用パラメータを用いているが、そのアイソス
ピン依存性はSIIIに劣ると言われる。
Skyrme力による変形核の計算は、70年代前半のVauthrinとBrinkによる先駆的
な計算以来あまりなされていない。変形Hartree-Fock法のむずかしさは、
Hartree-Fock計算で必要な精度が、Strutinski法にくらべてはるかに高いこと
である。そのために、基底の対角化で解こうとすると、非常に大きな基底が必
要になる。(最近Gognyらは、巨大なオシレータ基底を用いて
Hartree-Fock-Bogolyubov計算を行うようになった。) 現在活発に変形
Hartree-Fock計算を行っているグループに、フランスのBoncheらのグループが
ある。著者はこのグループとの2年間の共同研究を通じて、彼らのコードev8に
詳しい。
我々の研究は、ev8コードを東大大型計算機センターに93年春に導入された最
新のスーパーコンピュータに移植することで計算可能な量を飛躍的に増大させ、
変形Hartree-Fock計算を広範囲の核種について行うことを目的とする。
またその種の計算のために必要な修正2つをev8に加える。
\mysection{2.計算方法の概略}
Hartree-Fock解を求める一般的な方法は、調和振動子基底などを truncateし
て張った部分空間の中で、Hartree-Fockポテンシャル中の一粒子運動の対角化
を自己無撞着になるまで反復することである。この場合、行列の対角化が基底
数の2乗に比例する記憶領域と3乗に比例する計算時間を消費するので、あま
り大きな基底を用いることはできない。ところが、相互作用がSkyrme力のよう
にゼロレンジのときは、 Hartree-Fock場が局所的になるので、対角化によら
なくても一粒子状態を求めることが出来る。たとえば、球形核の場合には、動
径方向に関する一変数常微分方程式の固有値問題を(離散化して=1次元メッ
シュ表現で)解けばよい。これは20年以上前から実行されている。変形核を扱
う場合には、計算量は激増するが、例えば、Boncheらによる、ベクタ計算機向
きの「正方メッシュ上で表現された波動関数を、虚時間発展法で求める手法」
[Nucl.Phys.{\bf A443} (1985)39] を用いれば、実用的な速度で解を得ること
が出来る。
Boncheらのコードの特徴は、波動関数を正方メッシュ上の値の集合で表現すること
である。通常の、調和振動子基底で波動関数を展開する方法では、核外での波
動関数の漸近形が調和振動子型に制限されてしまうため、スキンやハローを扱
うことが出来ない。一方、メッシュ表現では、任意の漸近形が扱える。また、
原子核の飽和性が高運動量状態の混入を抑制するため、メッシュ表現は特に原
子核に適した表現であるといえる。このコードでは極座標の動径方向のみをメッ
シュ表現で扱うのでなく、3次元正方メッシュ表現を採用するので、球形にか
ぎらず、様々な形状を偏見無く取り扱うことができる。この表現では、必要な
基底数(メッシュ点の数に比例する)が大きいため、計算規模は巨大になるが、
一方、角運動量を陽に扱わないので計算式が単純になり、アルゴリズムがヴェ
クター計算機に適したものにできる。また、このコードは、多人数のクロスチェッ
クをへて製作・維持されている点から判断して、きわめて信頼性が高いことも
特徴である。なお、メッシュサイズと計算の精度の関係については、すでに詳
細に研究されていて、問題はない。
液滴+殻補正法とHartree-Fock法とを比較すると、現時点では前者のほうが計
算量が少ない。しかし、前者では変形を扱うパラメータの数が増加するにした
がって計算量が激増する。後者では、反復のステップ毎に全ての自由度が同時
に最適化されていくので、複雑な変形を扱う場合には前者より効率が良くなり
得る。現在主流の殻補正法が今後Hartree-Fock法に置き換えられていくように
思う。
このコードは元来、核-核衝突用に設計されたTime-Dependent-Hartree-Fockコー
ドをHartree-Fock+BCSコードに書き換えたものである。即ち、
Time-Dependent-Hartree-Fockの時間発展を虚時間による冷却に置き換えたの
である。波動関数はサイズ1fmの正方メッシュ上の値の集合で表されるが、計
算は、まず、ニルソン模型の一粒子運動の波動関数100〜200個をメッシュで表
し、これらにオペレータ$\exp (-h\Delta t) \sim 1 - h \Delta t$を作用さ
せる。ここで$h$は運動エネルギーとHartree-Fockポテンシャルからなる一粒
子ハミルトニアンである。$\Delta t$は$1.5 \times 10^{-24}$秒程度にとる。
Skyrme力がゼロ・レンジであるため、Hartree-Fockポテンシャルは局所的とな
り、この操作の計算量は有限レンジの場合と比較して非常に少なくて済む。
クーロン・ポテンシャルは時間のかかる3次元積分を避けるためにポアソン方
程式を解いてもとめる。境界値に関しても、やはり3次元積分を避けるために、
原子核の荷電分布を多重極展開してもとめる。クーロン力の交換項はスレーター
(局所)近似する。
虚時間発展によって各一粒子波動関数のエネルギー期待値は下がるが、一方、
相互の直交性が失われるので、ステップ毎にScmidt法で直交化する。各軌道の
占拠確率は、ステップ毎にBCS方程式を解いて決定する。(対相関相互作用の
行列要素が各軌道の波動関数によらないとき[例えば、定数であるとき]には、
Hatree-Fock+BCS法はこのように2段階に分けて解いて良いことが示されてい
る。)
ニルソン波動関数から出発して束縛エネルギーが精度2〜3keVで決定されるま
でに、500〜2000ステップの虚時間発展が必要である。ただし変形・球形遷移
領域核には、5000ステップでも収束しないものがある。隣の核の解を初期状態
として使用する場合には、変形があまり変わらないときは、ステップ数は200
回程度で十分である。変形共存の可能性のある場合には、プロレート、オブレー
トそれぞれの形状を持つ初期波動関数から出発して、別々に解を求めてみる必
要がある。
\mysection{(計算の結果-1) 移植コードの性能}
我々は、まずev8コードを東大大型計算機センターのヴェクター機HITAC
S3800/480に移植した。修正の結果、最終的に、Cray2を使う場合の約25倍の速
度が出せた。これは、公称計算速度の比(8GFLOPS/200MFLOPS)=40倍には及ば
ないが、非常な高速化であり、我々にはBonche氏らとは質的に異なった種類の
研究が可能であると言えよう。彼らは、少数の核を選び、その励起モードを
詳細に調べるタイプの研究を主に行っているが、我々は、例えばこの報告のよ
うに$(N,Z)$平面上で大域的に基底状態の計算を行うという種類の計算ができ
ることになる。ちなみに、彼らは、一人あたり年に200時間程度のCray2のCPU
タイムを使用している。これは、S3800での8時間にあたる。
\mysection{(計算の結果-2) 対相関力強度の連続状態密度近似による決定}
移植の次に、Bonche氏らのグループの計算の弱点と思われる対相関相互作用強
度に関して、連続状態近似で経験式$\bar{\Delta} = 12/\sqrt{A}$MeVが得られるよ
うに$G$を決定する方法を開発した。状態密度をもとめる方法は数種類を考案
し試行したが、最終的に採用したものは、Thomas-Fermi近似(スピン軌道ポテ
ンシャルは無視する)によるものである。ただしこの方法でも、軽い核に関して
は$G$が大きくなりすぎるので、$G > 0.6$MeVのときは0.6MeVに置き換えるこ
とにした。この$G$の値は、$^{20}$Caが正常状態にとどまるように選んだもの
である。今後、$\bar{\Delta}$の経験式を改良することが望まれしい。
なお、相互作用強度は、BCS方程式に取り入れる一粒子レベルの数に依存する。
Hartree-Fock法においては、正エネルギー状態は非束縛状態であり、これらの
占拠確率が0でないと、原子核はまわりに「ガス」を伴ったものになってしま
い、物理的に正しくない。したがって、BCSのスペースはニルソン模型に基づ
く場合にくらべてかなり小さく取らねばならず(我々はフェルミ準位の5MeV上
までを取った)、ニルソン模型のためにフィットされたパラメータを用いること
はできない。
ちなみに、中性子過剰核では、中性子のフェルミ準位が高くなり、BCS法でフェ
ルミ面をぼやけさせると、正エネルギーの状態が混入し、無限遠まで広がった
解が得られてしまう。(これは、HF+BCS近似に固有の問題であり、HFB法を用い
れば、フェルミ準位が負のときは空間的に局在した解が得られるが、そのため
には座標表示でHFBの解を求める方法を考え出さなければならない。)一方、陽
子過剰核では、クーロン障壁があるために、障壁の外側のポテンシャルを「埋
め立てる」ことで局在した波束として陽子の一粒子波動関数をほぼ一意的に決
定することができる。したがって、我々の計算では中性子ドリップ線に近い核
は計算していないが、陽子ドリップ線についてはそれを越える核も計算した。
\mysection{(計算の結果-3) $Z\leq 82$核の基底状態の計算(経過報告)}
計算では、メッシュ間隔は1fmとし、ボックスサイズは
13fm$\times$13fm$\times$14fmとした。点群のD$_2$対称性を仮定して、この
ボックスの一隅に一個の原子核の1/8が置かれた。解を求める手順は以下のよ
うである。各アイソトープ鎖について、もっとも重い核の波動関数をニルソン
模型でつくり、これを虚時間発展させてHF+BCS方程式の解を求める。さらに、
$N$の2個小さい核の解を順次求める。解を求めるのに要したステップ数の分布
を図1に示す。各核について2000ステップで計算を打ち切った。2000ステップ
まで計算を続けても収束しなかった核は、ほぼ全てが球形・変形遷移領域にあ
る。
計算は、$Z \leq 82$の偶々核について行った。
図2は、計算した核種を表示し
たものである。四角印は陽子のフェルミ準位が負の核、△印は正の核である。
両者の境が陽子ドリップ線に対応する。ただし、変形の異なる解が存在して、
そちらの方が現在得ている解よりエネルギーが低い可能性があるので、今後、
現在プロレート(オブレート)解を得ている核についてはオブレート(プロレー
ト)解の存在を調べる必要がある。その後、結果を論文として公表する予定で
ある。
\end{document}
\begin{table}
\begin{tabular}{|r|r|r|r|}
\hline
$Z$ & $N_{<}$ & $N_{\rm p-drip}$ & $N_{>}$ \\
\hline
2 & 2 & 2 & 8 \\
4 & 2 & 2 & 12 \\
6 & 2 & 4 & 18 \\
8 & 2 & 6 & 18 \\
10 & 2 & 8 & 22 \\
12 & 2 & 8 & 26 \\
14 & 4 & 8 & 30 \\
16 & 4 & 12 & 34 \\
18 & 6 & 14 & 34 \\
20 & 8 & 16 & 34 \\
22 & 10 & 18 & 38 \\
24 & 12 & 18 & 40 \\
26 & 12 & 20 & 44 \\
28 & 14 & 24 & 48 \\
30 & 18 & 26 & 52 \\
32 & 20 & 28 & 54 \\
34 & 24 & 30 & 58 \\
36 & 26 & 32 & 60 \\
38 & 28 & 34 & 66 \\
40 & 28 & 36 & 66 \\
42 & 32 & 38 & 70 \\
44 & 34 & 40 & 72 \\
46 & 36 & 44 & 76 \\
48 & 38 & 46 & 84 \\
50 & 42 & 52 & 86 \\
52 & 44 & 56 & 88 \\
54 & 48 & 58 & 94 \\
56 & 50 & 60 & 94 \\
58 & 52 & 60 & 96 \\
60 & 54 & 64 & 98 \\
62 & 58 & 68 & 100 \\
64 & 60 & 70 & 102 \\
66 & 66 & 72 & 104 \\
68 & 68 & 76 & 108 \\
70 & 70 & 78 & 114 \\
72 & 74 & 82 & 114 \\
74 & 76 & 84 & 118 \\
76 & 80 & 86 & 122 \\
78 & 84 & 90 & 126 \\
80 & 88 & 92 & 130 \\
82 & 92 & 102 & 134 \\
\hline
\end{tabular}
\end{table}