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最終更新日: 2011/12/7
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授業改善アンケート回答の分析
以下の文章は、冊子、福井大学工学部授業改善のためのアンケート調査報告書
平成18年4月福井大学工学部及び工学研究科自己点検・評価委員会の20~22
ページとして私(田嶋)が執筆したデータ分析結果の原稿です。
■ 授業評価アンケート回答の分析(2006年/4月, PDF)
【補足説明】
- 評価は1〜5の5段階でなされ、良い評価が1、悪い評価が5です。
- 現在の「授業改善アンケート」とは異なり、当時の「授業評価アンケート」は
全授業に対して実施されていました。
- 教員個人毎に、その教員がその学期に実施した授業同士で評価値を比較す
るという分析は行いませんでした。「教員個人ごとに見ると、その教員の
担当した授業の評価値は、同じような値である、すなわち、評価値は教員
によって決まり、授業によらない」という結論がこの分析結果から導かれ
たということを伝え聞いたらしい人がいましたが、それは誤解です。分析に
用いたデータには授業番号が含まれていましたが、担当教員番号は含まれ
ていませんでした。そして、授業番号から担当教員を特定する作業は行い
ませんでした。
- したがって、この分析は、現在の「授業改善アンケート」が年に1科目で
よいとされている根拠にはなりません。むしろ、逆に、この分析で確認
された受講者の人数と評価の逆相関から言えば、同じ教員でも授業により
評価はばらつくことが予想されます。
実は、私が自己点検委員会で聞いた委員
長の説明では、1年目は「試行だから」という理由で1科目でよいとした
のです。しかし、2年め以降はもはや試行ではないにもかかわらず1科目
でよいということが踏襲されてしまっただけのことだと思われます。
- しかし、この分析当時のアンケートの最大の問題は(私が思うに)、アン
ケート項目が多過ぎ、それを全授業で行うので、学生がアンケートに疲れ
てしまうほどだということでしたから、科目数を減らしたのは、必要なこ
とでした。ただし、私の考えでは1科目にまで減らす必要はないと思います。
私自身は、学期に1科目、年に2科目行っています。そうすると前期の
授業は2年に一度、後期の授業は3年に一度の頻度になります。1年に
一科目だと5年に一度になってしまいます。それでは頻度が低すぎるでしょう。
- この分析結果を読んだことで「授業アンケートは少人数の講義でしか行わないこ
とにした」と発言している教員がいたと聞きました。
しかし、だからと言って、そのような「抜け道」を隠したままにしても、
それはこの報告書を読まなくても推察できることですから、
分かっている人だけが得をすることになります。
そうするよりは、抜け道は公開して、公知となった抜け道
をあからさまには使いにくい雰囲気にするのが良いやり方だと私は思います。
また、現在では、毎年実施授業を変えるように指示が出ているので、
もはや、その抜け道はあまり役立たなくなったと思われます。
- 分析を始める前に、 まず、データから時間割番号の項目を削除したうえで、
データの順番をランダムに並べ替えたデータファイルを作り、分析作業は
専らこの作り直したデータファイルを使って行いました。その第一の理由は、
評価結果が極端な値の科目のデータを検討しようとすると、
目に入った時間割番号が頭に残ってしまい、何かの拍子に
見たものを口外してしまうことを危惧したためです。
- 最後の表(図表16)を図表15に類似した形式のグラフではなく表にした理
由は、グラフにすると大人数の授業について授業の特定が可能になること
が想像されたからです。そして、大人数授業には評価値が低いものがある
ので、特定されることはその授業の担当者にとって不利益と考えられるの
です。
- アンケート改革の際に委員として教員の意見を集めた経験では、学生の回
答で教員が評価されることに不適切さを感じる人が少なくありませんでし
た。(ちなみに、冒頭に掲げた報告書には、膨大な学生と教員の意見が記
載されています。)しかし、そのように感じる人にも、授業アンケートを
全面的に否定することはして欲しくないと思います。私は、授業アンケー
トの第一の機能は、学生と教員の間の意見交換の仕組みであると考えてい
ます。教員の評価については、そういう第二の機能もある、ぐらいに考え
ておくのがよいと思います。
- 回答項目が数十項目もあるような過重な仕様の授業アンケートを全科目に
対して実施している大学の実例について講演で聞いたことがあります。想
像ですが、そこまで「頑張る」理由として、自然に頭に浮かんだ理由は、
授業アンケートの実施が自分の職(何々教育センター専任教員とかの)の
存在理由であるような教員の人が行っているからだろう、たぶんそんな気
がする、ということでした。アンケートのやり方を決めるにあたっては、
そのような余分な理由が働かないようにすることが大切だとも思われまし
た。我らの大学はそのような専門職の人をおくほどの余裕のある大規模な
大学ではありませんが、むしろ、それを幸いとして、アンケートが簡素な
ままで肥大化せずにいる状態を意識して守っていくべきだとも思われまし
た。
- 将来は、授業アンケートは、紙に記入してもらうのでなく、web入力に変
えるのが望ましいと考えます。そして、学生は受講した授業全てについて
アンケートに回答できるようにしてしまうのです。しかし、アンケート疲
れの問題が再来しないように、質問項目数はできるだけ絞りこんだものに
留めることが重要です。情報の豊富さは自由記述欄に期待すべきでしょう。
- web入力にすれば、現在のやり方で必要である紙の回答を集計する作業の
外注予算が節約できるという副次的な効能もあります。
- web入力にすれば、アンケート結果の改竄を防止できるという副次的な効
果もあります。現在の私たちの大学の工学部のアンケートは教員が自分で
集めて読んでから提出するという仕組みです。誰かが回答を改竄をしてい
るという疑念は誰も持っていないと思いますが(理由はアンケート結果が
原因で教員が窮地に立たされることはないから ← 善いことです)、この
仕組みだと原理的には改竄は可能であります。前々々項で述べた他大学で
実施されていた「過重な仕様の授業アンケート」では、アンケートの依頼
と回収は学生自宅との郵便のやりとりで行われていました。アンケート実
施責任者として完全を期さねばならない立場なら、回答の改竄という可能
性がゼロと言えない限り、それに目をつぶることはできないわけでしょう。
web入力なら、そういう、ただ万全を期すための予防措置も郵便代のよう
な追加経費が不要で実現できるわけです。
- そのようなシステムができれば、それを利用して、ベストティーチャーの
選出もweb入力方式に変えるのがよいと私は思います。webなら、3年生だ
けでなく1、2年生もその学期に受講した授業の担当者について投票する
ように制度を変えることも困難なくできます。ただし、3学年からの3つ
の結果のすり合わせ方法については、何かもっともなものを考え出す必要
はありますが。
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