日本物理学会 秋の分科会 (宇都宮大学) 1987年9月30日〜10月3日 講演予稿集原稿

講演番号 3aG-2
講演題目 核変形のガンマソフト化と高Kアイソマーの寿命
講演者  東大教養          田嶋直樹・大西直毅

 変形核に見られる、 Nillson 軌道間の粒子・空孔励起配位を持つ高 K 量子
数状態は、多重極性の低い電磁遷移を禁止する K 選択則により、長寿命化し
やすい。しかし、核変形の軸対称性が壊れると、K 量子数の異なる状態が混合
して K 選択則が効かなくなり、崩壊が早められると予想される。

 実験的には、184W の 10+ isomer は 1.4 μsec もの長い半減期を持つの
に対して、γ-soft な核と言われる 184Os の 10+ isomer の半減期は 20
nsec しかない。これらは共に同じ( intruder 軌道の 0h11/2 から分かれた )
11/2[505] 軌道と 9/2[514] 軌道間の p-h 励起配位を持つと考えられるにも
かかわらずである。

 我々は、ガンマ自由度を動的に取り入れた γ-soft Bohr 模型と 0h11/2 
軌道の陽子とを結合させた particle-rotor 模型を使って、この相違について
考えた。この模型では、芯の固有状態と 実験室系で見た粒子系の状態との直
積状態を基底として状態空間を張る(いわゆる弱結合基底であるが、粒子配位
は全て取り入れるので弱結合の仮定をしている訳ではない)ので、角運動量の
扱いが正確であり、また、芯の運動を完全に量子力学的に扱うことが簡単であ
る。 Cranking 模型と較べて、電磁遷移が近似なく計算できることや、大振幅
の振動も困難なく扱えることなどの利点を持つ。

 上述の 10+ isomer を想定した計算結果および、ガンマ自由度の静的導入と
動的導入との相違、粒子系との結合による芯の状態の励起・混合、固有座標系
での波動関数( K 量子数のバラつきなど)について、議論する。

参考文献) N. Tajima and N. Onishi, Phys. Lett. B179, 187 (1986)