日本物理学会 秋の分科会 (甲南大学) 1986年10月7日〜10日 講演予稿集原稿

講演番号  7pG-5
題目      182Os 周辺での離対異種核子間力の効果
講演者    東大教養  田嶋直樹・大西直毅

 変形核の高スピン状態での特徴的な現象に、所謂、慣性能率の(第一)後方
歪曲がある。これは、一対の同種核子の回転整列によるものと理解されている。
これを取り扱う模型には、回転整列を促進するもの(コリオリ力)と妨害する
もの(対相関力等)が取り入れられれば、定性的には十分である。しかし、第
二後方歪曲が問題になるような高スピン状態や、イラストから励起した状態を
扱うには、従来の模型にはなかった新たな要素を模型に取り入れる必要が出て
くる。

 我々は、その一つとして、今までほとんど考慮されなかった、貫入軌道での
陽子・中性子間の相互作用の重要性を、強調して来た。重陽子のスピンが1で
あることに例証されるように、異種核子間の相互作用は、スピン三重項を好む。
高スピンで重要な貫入軌道に於ては、これは、2核子の全角運動量の整列を意
味する。したがって、回転整列によって各々のスピンを互いにほぼ整列させた
離対核子間には、同種核子間の対相関的な力は余り働かないが、異種核子間力
は強く働き核構造に大きな影響を及ぼす可能性がある。

 その例として、前回は、182Osに発見された特異な崩壊様式を示す高スピン
アイソマーが、陽子・中性子相互作用によって優遇される2陽子・2中性子の
回転整列したバンドのバンドヘッドとして説明できる事を、h11/2 軌道の陽
子とi13/2 軌道の中性子を同時に取り入れた粒子・回転子模型で示した。今
回は、芯と貫入軌道との間のクーパー対の交換の相互作用を取り入れるなどし
て、前回の計算の問題点を改善するとともに、この種のアイソマーがOs同位
体にのみ発見されている原因を調べるため、周辺の核についても計算を行う予
定である。貫入軌道が良く詰まっていることが、この種のアイソマーが成立す
るのに必要な条件の一つだと予想される。