以下は講演概要の latex source file です。
% jpsm02fl.tex 物理学会2002秋 講演予稿 : 2002/7/10
%
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\pagestyle{empty}
\newcommand{\refer}{\ref}

\noindent
{\Large 16aRG-13}
\hfill
{\Large Skyrme型対相関力を用いた正準基底HFB法}

\vspace{2mm}

\noindent
\hspace*{16mm}
{\large
福井大学工学部物理工学科\hfill
田嶋直樹
}

\noindent
\hspace*{16mm}
{\normalsize
Canonical-basis HFB with a Skyrme-type pairing force
}

\noindent
\hspace*{16mm}
{\normalsize
Department of Applied Physics, Fukui University
\hfill
Naoki Tajima
}

\vspace{\baselineskip}

{\normalsize

\baselineskip=0.65cm
\newcommand{\baselineskipTaj}{0.325cm}

有効相互作用を用いる平均場模型は原子核の基底状態の諸性質を再現し予想す
るのに有力な手段であるが、様々な核種に適用範囲を拡大するには
(アイソスピン依存性などの主目標の他に)次の2点に
注意を払う必要がある。
%
{\scriptsize \fbox{1}}
存在しうる1万種の核種のうち約半数では中性子のフェルミ準位が
主殻間隔($\hbar \omega$) の$\frac{1}{2}$以下しかないので、対相関への
殻効果を正しく取り入れるためにエネルギーが正の一粒子準位を考慮する必要
がある。
%
{\scriptsize \fbox{2}}
特に中性子過剰な核種になるとエネルギーが零に近い一粒子
準位の空間的広がりが大きくなるため、一粒子波動関数を調和振動子の固有状
態などの基底による展開で表していては十分な精度を得られないので、位置座
標空間での表現が必要となる。
%
したがって「正エネルギーの一粒子状態を位置座標表示で表すこと」が必要となるが、
これは状態の位相空間の大きさが障害となって、確立した解法はない。

解決策のひとつは、HFBの真空を、通例にならい Bogoliubov 準粒子の真空と
して表現するのでなく、HFB正準基底に移ることでBCS変分関数の形に表す方法
である。しかしながら、位置座標表示の平均場法は、ゼロレンジの相互作用に
対してのみ効率的に解くことができるので、HFB法においてもゼロレンジ力を
受け入れるべきであるが、ゼロレンジ力には状態空間が無制限なら対相関強度
が無限大に発散するという問題がある。

対相関を考慮しない平均場法、すなわちHartree-Fock (HF)法では、エネルギー
の発散は原子核の点への収縮(核子密度の発散)というかたちで現れるが、有効
相互作用に密度への斥力的依存性を取り入れることで発散を防いでいる。対相
関を考慮する場合も同様に相互作用の対相関チャンネルに対密度への斥力的依
存性を入れることで発散を阻止できるが、そのような依存性の副作用をはかり
かねるため他に良い発散回避策がないかさらに考察を進めてきた。

例えば対相関相互作用の行列要素に、関与する軌道の性質($k^2$の期待値など)
の関数としてカットオフ因子を導入することは有効であるが、これを正準基底
に対して行なうと、準粒子に対するハミルトニアンが存在しなくなりHFB法の
もつ理論的利点のひとつが失われてしまう。相互作用そのものにカットオフ因
子に類似した作用をもつ演算子を含めることができれば、準粒子励起を単一の準
粒子 Hamiltonian から計算できるという点で望ましいことである。

さて、Skyrme 力の $t_1$, $t_2$ 項は 純粋な$\delta$関数力である$t_0$ 項
に有限レンジの効果を移行運動量の2次までの近似で取り入れるために導入さ
れたものであり、カットオフに近い働きをすると期待される。(ここまでが参
考文献[1]に述べたことである。)
そこで今回、対相関力にこ
れらの運動量依存項を実際に取り入れたところ、HFBの正準基底解法にお
いても、他のカットオフを併用することなく、安定した解が得られることが
実証された。質量数50程度までの核の基底状態の計算結果、
正エネルギーのHFB正準軌道の性質、ドリップ線への接近にともなう正準基底軌道
の変化・無変化、正準基底の個数への対相関強度の依存性などの結果を示し議論する。

\vspace*{5mm}

\noindent
[1] N. Tajima, nucl-th/0002060, RIKEN Review {\bf 26}, 87. PDF file(217kB)
 available at\\
$\phantom{[1]}$
http://www.riken.go.jp/lab-www/library/publication/review/pdf/No\_26/26\_087.pdf
} % large
\end{document}