日本物理学会 第56回年次大会 (中央大学多摩キャンパス) 2001年3月27日〜30日 日本物理学会講演概要集 第56巻第1号 第1分冊 p.19 講演番号 27pSB-9 題目 Skyrme力による非対称核物質の対相関」 講演者 福井大学 工学部 物理工学科 北嶋靖,田嶋直樹 title Pairing correlation in asymmetric nuclear matter with Skyrme forces speakers Yasushi Kitajima and Naoki Tajima, Fukui University, Dept. Applied Physics 不安定核の基底状態の諸性質の予想にはSkyrme力を用いたHFB法計算が有効 であるが、相互作用の平均場チャンネルでのSkyrme力の高い信頼性に対し、対 相関チャンネルでの有効相互作用の信頼性はいまだに低いものである。本講演 では、Skyrme力がどのような対相関を生成させるのかを、比較的簡単に取り扱 える一様核物質について調べた結果を報告する。特に、以前の計算[TOT94]で はとりあげなかった非対称核物質での対相関強度が陽子密度と中性子密度の2 変量の関数としてどうふるまうかに重点を置く。計算結果をもとに、有限核の 構造計算において対相関力のあるべき形について、密度依存性と運動量依存性 の両面から議論する。 また、BCS方程式の数値解法についても議論する。一様核物質に対しては、 HFB計算は比較的簡単なBCS計算に還元されるが、BCS計算で正しく解を求める ことは、それなりの注意深さを必要とする。以前対称核物質について行った BCS計算[TOT94]では、カットオフへのSkyrme力に特有の依存性が見出され、そ れとの関係でギャップ方程式への反復代入という素朴な方法では解に到達でき ないことが経験された。そのときは、反復間の大きな減衰因子および逆正接関 数の枝選択アルゴリズムの導入というアドホックな手法で解への収束を達成し たが、本研究では最急降下法のもつ設定の自由度を利用することにより、正攻 法たる最急降下法によってもいかに解が困難なく求めることができるようにな るか、また、いかにして解であることの検証を確実に行ったか、その方法と結 果を報告する。 図: 【図のファイルは準備していません】 中性子のフェルミ波数 $k_{\rm F}^{({\rm n})}$ および陽子のフェルミ波数 $k_{\rm F}^{({\rm n})}$ の2変数関数としての中性子の対相関ギャップのふるまい。 相互作用に Skyrme SIII 力を用い、カット・オフのため、中性子・陽子それぞれ のフェルミ準位から上下に 10 MeV 以内の一粒子状態のみを計算で考慮した。 [TOT94] S. Takahara, N. Onishi, and N. Tajima, ``Pairing Correlation in Nuclear Matter from Skyrme Force'', Physics Letters B331 (1994) 261-265.