昭和61年度共同利用計算費使用報告書

研究テーマ  高スピン核における陽子・中性子間相互作用の効果

使用責任者  田嶋 直樹 ( 東大 教養 )
共同研究者  大西 直毅



a)abstract
     Intruder-orbital-configurations in high-spin deformed
nuclei are investigated considering the effect of the
interaction between protons and neutrons.  We used a
particle-rotor model in which 8 protons in the h11/2
orbital and 8 neutrons in the i13/2 orbital (restricted to
vp+vn<=8) are coupled with an axially symmetric rigid
rotor through a Q・Q interaction.  It is shown in our
calculation that the interaction between two-neutron
rotationally aligned (RA) band and two-proton-two-neutron
RA band is so strong that a pair of protons align their
spins gradually after the first backbending which is due
to a sudden RA of a pair of neutrons.

b)計算により得られた物理的内容

 変形核の高角運動量状態では、多数の核子が pairing を解消して回転整列
していると考えられるが、これらの核子間の相互作用のうち、特に陽子・中性
子間のものが重要な効果を持つと予想される。同種核子間の相互作用が2核子
のスピンが 0 に組んだときに限って強い引力となる pairing 的傾向を示すの
に対して、異種核子間のそれは、(Q・Q相互作用的性質およびスピン三重項
の強い引力により)2核子のスピンが整列した状態をも優遇するからである。

 このことに関連して我々が取り組んできたのが、182Osなどに見られる高
スピンアイソマーである1)。このアイソマーは、主として s-band へ脱励起す
るという崩壊パターンを示すため、(粒子配位として intruder 軌道だけが関
与するような)回転整列的構造を持つと予想される。我々はこのアイソマーが、
2個の陽子と2個の中性子が、ほぼスピンをそろえた状態だとする解釈を与え
た2)。

 今回は、陽子・中性子系の状態への seniority による制限 vp+vn<=6 を
vp+vn<=8 に緩め(その結果、状態数が5倍になる)、より現実的な計算を行
うと共に、アイソマーの崩壊経路上に存在し、実験的に観測可能と考えられる
状態の構造を調べた。具体的には陽子・中性子それぞれのスピンの期待値を分
けて求め、また、芯の固有座標系に移って K 量子数の分布を計算した。アイ
ソマー自体についても新しい実験結果に基づいて計算を進めたが、実験が未公
刊なのでここでは割愛する。

 我々の採用した粒子回転子模型は、高スピンに於て重要な intruder 軌道の
配位については(球対称な)殻模型で取り扱い、残りの軌道にある核子の自由
度は何らかの集団モデルで表すものである。 Hamiltonian は、

     H = Hp + Hc + κ(Qp・Qc) 。

ここで、Hp は殻模型の hamiltonian であり、Hc には今回は軸対称剛体回転
子の hamiltonian をとる。粒子・芯間には芯の変形の効果を表す Q・Q 力が
働くとする。更に Cooper 対交換の相互作用を取り入れることがあるが、今回
は無視し、intruder 軌道の陽子数・中性子数を固定した。

 状態は、I、M を全角運動量およびその z 成分、 J、R を粒子系および芯の
角運動量、a、b を補助量子数とし、添字π、νで intruder 軌道の陽子系、
中性子系を表すものとすると、A、B を振幅として、

  |ΨIMb > = Σ AIbJaR |JaR ; IM >

但し、

  |JaR ; IM > = Σ < J m1 R m2 | I M > |Jam1 >|Rm2>

  |Jam >   = Σ BJaJ a J a |J a J a ; Jm >

    |Rm > = ((2R+1)/8π2)1/2 DRm0(ωc)

と表される。このモデルは、芯の運動をも量子力学的に扱っているので、角運
動量が保存されること、電磁遷移が正しく計算できること等の利点を持つ。

 芯の固有座標系で表された基底への変換は、軸対称芯の場合、

  |JaR ; IM > = Σ (-1)J-K < J K I -K | R 0 > |JaK ; IM >

   |JaK ; IM > = |JaK >  ((2I+1)/8π2)1/2 DIMK(ωc)

で表される。この基底を用いれば K 量子数分布の表式は自明である。R1対称
性を考慮すると、K≠0 の基底に付いてはその数を半減させることができる。

 以下では主に182Osを考え、h11/2 軌道に 8 個の陽子を、i13/2 軌道に 
8 個の中性子を入れた場合の計算結果について述べる。

 yrast 線に沿っては、第1 backbending で中性子対が急激に離対・回転整
列したあと、陽子対が(第2 backbending という形をとらずに)徐々に回転
整列して行く様子が見られた(図1)。これは、(2中性子回転整列配位であ
る)s-band においては、スピンの整列を好む異種核子間相互作用によって、
更に2個の陽子が回転整列し易くなるためと考えられる。

 K 量子数の分布を調べてみると、回転整列的な K=0 にピークを持つ分布以
外に、(バンドによって、また、同一のバンド内でも角運動量によって)様々
な特徴のある分布を示すことが分かった(図2)。このような K 量子数分布
の違いにより K 選択則が働いて、先述のバンド間相互作用の強さと矛盾する
ことなく、多(準)粒子配位バンドの先頭状態の長寿命化が説明できると思わ
れる。

 したがって、s-band やその励起した構造を持つバンドでは、1対の中性子
が回転軸方向を向いている様な単純・静的な配位では十分ではなく、2個の陽
子と2個の中性子、あるいは更に多くの核子が関与した配位が、或る相関を持っ
て混在する動的な状態として把握する必要が示唆されていると考える。

c)計算技術上の特記事項

 文献 2) の計算では、粒子系と芯の結合系を Lanczos 法で対角化するにあ
たり、相互作用の行列要素が必要になる毎に、それを粒子系の部分行列要素と
芯の部分行列要素および幾何因子を乗じて作り出していた。この方法により大
幅なメモリーの節約がなされた。

 しかし、この方法では、同一アドレス(適切にはバンク)への連続したアク
セスが起こり、スーパーコンピューターに乗せた場合、大きな遅延をもたらす
ことが分かった( bank conflict ) 。これを回避する方法も考察中だが、計
算機のメモリーが増設されたこともあって、今回は単純に、メモリー上に全行
列要素を書き出しておく方法をとった。

[文献] 1) J. Pedersen, et al., Phys. Rev. Lett. 54, 306 (1985)
     2) N. Tajima and N. Onishi, Phys. Lett. B179, 187 (1986)

d)ブロックダイアグラム
�穐がががががが�
�Γ咤複藤稗味適� single-j 配位に関する諸量を計算し file に書き出す。
�謙が亂がが亂が蒔穐ががが�
  �Α ゜征がが硲達藤亂Α  �seniority scheme に基づく j-j 結合
    ��    �Α ゜謙ががが次  �c.f.p.を計算する。
    ��    ��    �穐ががが�
  �Α ゜征がが硲庁藤亂Α  �n → (n-2) c.f.p. を計算する。
    ��    ��    �謙ががが�
    ��    ��    �穐ががががが�
  �Α ゜征がが硲咤複錬贈婁Α�single-j 配位間の1体演算子の換算行
  �Α ゜Α ゜謙ががががが次[麝彖任鯀� rank について計算する。
    ��    ��    �穐がががががが�
  �Α ゜謙がが硲丕丕裡裡藤蓑ζ閏鏗忙甸崛蠍澪醉僂糧麥躪堽麝彖任魴�
�穐が悴がががが巻謙がががががが嫉擦垢襦�
�Γ丕裡咤截咤卯Α[鎧匏呂鯊亞儔修靴修慮罵�状態間の各種行列要素を計算
�謙が亂が亂亂が蒔穐ががががが粥,垢襦�
  �Α゜Μ征がが硲唯烹唯圍岡Α〕杙辧γ羸�子系の hamiltonian Hp の行
  �Α゜ΜΑ ゜謙ががががが次[麝彖任魴彁擦垢襦�
    ��  �Μ�    �穐がががが粥 �
  �Α゜Μ征がが硲庁韮裡蓑Α �Hp を Householder 法により体角化する
  �Α゜ΜΑ ゜謙がががが次  米�立社 library 使用)
    ��  �Μ�    �穐ががががが粥�Hp の固有状態間の四重極演算子の換算
  �Α゜Μ征がが硲傳劭庁唯適Α[麝彖任鰺杙辧�中性子それぞれの寄与に
  �Α゜ΜΑ ゜謙ががががが次(�けて計算する。
    ��  �Μ�    �穐がががががが�
  �Α゜Μ征がが硲複丕唯圍劭悴�Hp の固有状態間の陽子系の角運動量
  �Α゜ΜΑ ゜謙がががががが�Jproton の換算行列要素を計算する。
    ��  �Μ�    �穐がががががが�
  �Α゜Μ謙がが硲複丕横複裡岡�Hp の固有状態間の Jproton2 および
  �Α゜Α  ゜謙がががががが�Jneutron2 の換算行列要素を計算する。
    ��  �Α�    �穐がががががが�Hp の固有状態間の cooper 対移行の
  �Α゜謙ががが硲丕腺稗劭裡葱�行列要素を計算する。( intruder 軌道
�穐が悴がががが巻謙がががががが爾粒忙區瑤鮓把蠅垢襪箸�は不必要)
�Γ丕劭圍劭錬坎Α/弔販鎧匏呂魴觜腓気斬亞儔修垢襦�
�謙が亂がが亂が蒔穐ががががが粥/弔慮罵�状態と「 PNSYS 」で求めた粒
  �Α ゜征がが硲達丕唯腺亂Α〇匏呂慮罵�状態を結合させた基底で H
  �Α ゜Α ゜謙ががががが次,糧麥躪堽麝彖任魴彁擦垢襦�
  �Α ゜Α ゜穐がががががが�
  �Α ゜征がが硲味腺裡達擅哮�Lanczos 法により H を三重対角化する
    ��    ��    �謙がががががが次�
    ��    ��    �穐ががががが粥�
  �Α ゜謙がが硲庁韮裡味階Α〇綾殿亞儿堽鵑鯊亞儔修垢襦�
�穐が悴がががが巻謙ががががが次 米�立社 library 使用)
�Γ釘唯圍劭裡哮Α/帖ξ鎧匏觜膩呂慮罵�状態について、電磁遷移振幅その
�謙ががが亂亂が蒔穐ががががが粥‖召領未魴彁擦垢襦�
    �Μ征がが硲釘横劭唯適Α�E2 遷移振幅を計算する。
        �Μ�    �謙ががががが�
        �Μ�    �穐ががががが�
    �Μ征がが硲唯隠劭唯適Α�M1 遷移振幅を計算する。
        �Μ�    �謙ががががが�
        �Μ�    �穐ががががが�
    �Μ征がが硲腺唯達錬飭Αヽ読�分系の角運動量期待値を計算する。
        �Μ�    �謙ががががが�
        �Μ�    �穐ががががが�
    �Μ謙がが硲烹庁稗咤坎Αー澗仂凌弔両豺腓砲弔い� K 量子数の分
    �Α  ゜謙ががががが次”曚魴彁擦垢襦�
        �Α�    �穐ががががが�
    �謙ががが硲庁釘達腺扛Α‐�態の寿命と崩壊の分岐比を計算する。

     【ブロックダイグラムの図は省略】